2021年8月27日 (金)

環境パトロール (2021-09) 自然休養林のハイキングコース E

日時 2021年(令和3年)8月24日(火)  8:30 - 15:30
区域 自然休養林Eコース(水ヶ塚公園・登1.5合、幕岩、御胎内)
天候 曇り/ 晴れ
山頂 (8時) 気温3.7℃、湿度 100%、649.1hPa
河口湖 (8時)上空3km W, 10m/s

 

 

富士山自然休養林ハイキングコースE(水ヶ塚公園から須山口登山歩道、幕岩、須山口下山歩道、御胎内を経て、水ヶ塚公園まで)を環境パトロールした。スカイライン富士宮側は8月17日から大雨被害による通行止め。

スタート時点での水ヶ塚公園の駐車場の車は約80台。終了時も同程度の駐車台数。検温の係の方に聞いた話では、「15時20分現在、本日は167名検温済」とのことだった。係の方へは富士山への来訪自粛要請は伝わっていなかった。パトロール中に会話した来訪者は5名(男女2名2組。単独女性1名)。

 

Kmg_20210824_082045

朝8時の水ヶ塚駐車場

 

Kmg_20210824_084134

同、検温ステーション

 

 

水ヶ塚上のEコース開始地点と腰切塚へのKコース入り口の標準標識には、静岡県の「緊急事態宣言による自然歩道をふくむ観光施設使用自粛」が案内されていた。水ヶ塚上には森林管理署の「A、Bコース立入禁止案内」も表示。

 

Kmg_20210824_084438

水ヶ塚上の標識につけられた利用自粛案内

 

Kmg_20210824_084508

森林管理署の「A、Bコース立入禁止案内」

 

 

富士登山オフィシャル・サイトには、8月23日づけで、富士山への来訪を自粛するようお願いが掲示されている。 また、富士山自然休養林のホームページでは、当面の間、ハイキングコースの利用を控えるよう、利用自粛が案内されていた。また、Aコース、Cコースの全面利用禁止が案内されている。

 

Hp

左:富士登山オフシャル・サイト 中と右: 富士山自然休養林のホームページ

 

 

 

地形・歩道

大雨の影響で歩道や階段部分に大きな侵食が見られた。昨年7月のEコース環境パトロールで報告した箇所を中心に、場所によっては、大きな侵食となって、通行や植生保全に影響があり、雨水経路を含む整備が必要と思われる。

 

水ヶ塚・須山口登山歩道1.5合(国有林保護林)

 

Kmg_20210824_091800

浅黄塚東部の歩道脇侵食

 

 

Kmg_20210824_093105

浅黄塚分岐・1.5合間登山歩道脇の侵食

 

Kmg_20210824_094127

 

Kmg_20210824_094240

 

Kmg_20210824_095604

 

Kmg_20210824_100140

この区間の、連続した登山歩道侵食の最上部

 

 

この区間の連続した侵食の最上部から、登山歩道がミズ道となり大雨のたびに登山歩道の侵食が深くなっている。この最上部の上側は、宝永第三火口からの流出砂礫の堆積地となっている。この堆積地を通過する雨水が侵食最上部へ集まっている。この集中を避けるために堆積地に複数の水切り(写真ポール方向)をつけ周辺植生部へ雨水を分散させたい。

 

Kmg_20210824_100220

連続した侵食の最上部から上手の登山歩道、ミズ道化

 

Kmg_20210824_100653

砂礫が堆積した登山歩道にポール方向に水切り設置

 

Kmg_20210824_100856

砂礫が堆積した登山歩道にポール方向に水切り設置

 

 

須山口登山歩道1.5合・須山口下山歩道1.5合間の水平道

 

Kmg_20210824_130050

水平歩道が涸れ沢を横切る地点での侵食

 

Kmg_20210824_130126

 

 

須山口下山歩道1.5合・幕岩下降点(世界遺産構成要素の須山口登山道区間)

大規模トレイルラン・レース(UTMF2013)時に、尾根上のうねった歩道を外れて直線的な踏み跡が明瞭になった。その後、来訪者はこの直線化した複線化部分を利用し、ミズ道となり侵食が進んでいる。

 

Kmg_20210824_130604

須山口下山歩道1.5合

 

Kmg_20210824_131720

右側に曲がっていた歩道が直線化しミズ道となる

 

Kmg_20210824_131758

右側に曲がっていた歩道が直線化しミズ道となる

 

Kmg_20210824_134604

崩落岸へ近づく直線化した踏み跡がミズ道となる

 

 

幕岩への下降路

幕岩への急な下降路は、昨年7月と同様に大雨による侵食が顕著。今年5月の環境パトロール時には、整備され歩きやすくなっていた。今回は、下りに不安を感じる状態になった。

 

Kmg_20210824_132047

ミズ道化した歩道の侵食、樹木根が露出

 

Kmg_20210824_132110

右側を避け左側の流失した木段部にも踏み跡

 

Kmg_20210824_132218

崩れやすい砂礫部分の侵食

 

Kmg_20210824_132430

同、例年の大雨後と同様に深く侵食

 

Kmg_20210824_132623

場所によっては危険を感じる下り

 

Kmg_20210824_132703

右側の立杭部分の土台が侵食でなくなり木段流出

 

 

幕岩・御胎内間の世界文化遺産の登山道

昨秋の環境パトロールで石を移動し歩きやすくなっていた下山歩道では、簡易的な水切りが数多く見られた。短い距離で植生部に水を逃している箇所は効果が見られる。一方、比較的長い距離に直線的に設置された簡易水切りは、雨水を集め、下流で下山道の侵食を大きくしている。

 

Kmg_20210824_135419

幕岩・御胎内間の世界文化遺産の登山道の水切り

 

Kmg_20210824_135746

同、短い距離で植生部分へ雨水を逃している

 

Kmg_20210824_140747

同、直線的に長い水切りが続く

 

Kmg_20210824_141255

同、集まった雨水で歩道が深く侵食

 

 

施設、標識

●水ヶ塚上の標準標識にくくりつけられた「自粛要請案内」は、取付け紐がゆるく、風で寄せられ読めなかったので縛り直した。また、水ヶ塚上の入り口に掲示されていた「クマ注意」の案内板は外れて土で汚れ読みにくくなっていた。

 

Kmg_20210824_151443

風で移動し読めない自粛要請案内

 

Kmg_20210824_151713

来訪者へ見えるように自粛要請案内を縛り直し

 

Img_20210824_151559_dro

外れて土で汚れ読めない「クマ出没注意」案内板

 

●Eコースの水ヶ塚上から須山口登山歩道1.5合目間では、毎回報告しているピンク色の私的マーキングはそのままだった。このビニールテープに誘導された踏み跡は、ミズ道化が進み、樹木根の露出・損傷がさらにひどくなっていた。

 

Kmg_20210824_092736

私的マーキングに誘導された踏み跡、樹木根損傷拡大

 

Kmg_20210824_093604

私的マーキングに誘導された踏み跡、樹木根損傷拡大

 

Kmg_20210824_094034

私的マーキングに誘導された踏み跡、樹木根損傷拡大

 

●幕岩には、KDDIと御殿場市の名前が入ったバーチャル・ガイドツアーの案内板があった。この案内板があるところは国立公園内であり、富士山自然休養林(国有林)内だが、環境省や森林管理署、富士山休養林保護管理協議会の名前はない。示された地図には多くの地点に同様な案内板が設置されている。管理者へ届け出ているのだろうか。

 

Kmg_20210824_132848

幕岩の「富士山バーチャルガイドツアー」案内板

 

●度々報告している、御胎内上の幕岩方向を示す標識は設置されていない。来訪者のため幕岩方向を示す標識が必要。

 

Kmg_20210824_142429

御胎内上、幕岩方面をしめす標識がほしい

 

●御胎内上から水ヶ塚公園にかけては、水ヶ塚方面を目指す場合にのみ見える、樹木の東側に(約2mの高さ)つけられた5cm x 7cm程度の私的マーキングが数m~十数m間隔で見られた。設置目的は分からない。

 

Kmg_20210824_145918

東側にのみ着けられたビニールテープの私的マーキング

 

Kmg_20210824_145515

樹幹の高さ2m、東側にのみ私的マーキング

 

Kmg_20210824_145628

内側テープをタッカーで固定し、外側に赤ガムテープ貼る

 

●須山口登山歩道1.5合、須山口下山歩道1.5合間の水平歩道に設置されているベンチは腐食してほぼ使えない。南山休憩所内にあったベンチはなくなり、二本の丸太が置いてあるが、座ると移動して危ない。

 

Kmg_20210824_125244

水平歩道の腐食がすすむベンチ

 

Img_20210824_121025_dro

水平歩道にある倒れたベンチ

 

Kmg_20210824_125518

 

Kmg_20210824_121910

南山休憩所内の不安定な丸太ベンチ

 

 

腰切塚山麓に作られたクロカン・コース

昨年と同様に斜面の傾斜方向に作られたコース内に水ミチができ、敷き詰められた大量のチップがコース外へ溢れ出し、植生の中まで集積していた。また、チップは腰切塚への歩道にも集積していた。さらに、一部は駐車場の公園の歩道にまで溢れ出していた。ウッドチップは土壌を酸性化する。また、チップに外来植物の種混入が懸念される。

毎年、斜面コースのチップが大量にコース外に流出し、周辺植生に堆積している。チップが流出したコースには、また、チップが補給敷設され、結果的に年々周辺植生に堆積が繰り返されている。周辺植生への影響を注視したい。

 

Kmg_20210824_152559

クロカン・コースのチップが溢れ植生部分へ

 

Kmg_20210824_152622

同拡大、大量のチップが流出。植生を覆う

 

Kmg_20210824_152636

同拡大、流出した大量のチップ

 

Kmg_20210824_153256

駐車場歩道までチップ流出

 

Kmg_20210824_153017

腰切塚への歩道交差部分から歩道へチップ流出

 

Kmg_20210824_152930

同歩道内のチップが周辺の植生へ広がる

 

 

 

植物

20210824map_p

背景は環境省植生図から自然林を抽出

 

●ミズナラの「ナラ枯れ」を3箇所で確認した(上図、薄茶色のマル印)。水ヶ塚上のハイキングコース入り口にある、昨年ナラ枯れのフラスを確認したミズナラは、部分的に枝が落ち、葉は疎らになった。下から見た限り実は見えない。登山歩道1.5合から南山休憩所間の水平歩道で、枯れたミズナラの大径木2本を見た。標高は約1,610m。一本は根本にフラスがあったのでナラ枯れだ。昨年度の休養林環境パトロールでナラ枯れのミズナラを多数確認している。今秋、ナラ枯れの影響でミズナラの結実が減少し、ブナの実の豊凶具合によっては、堅果を採食するツキノワグマなど動物生態に影響が出るかもしれない。

 

Kmg_20210824_084325

水ヶ塚上のミズナラ。枝が落ち葉も疎ら、実は見えない

 

Kmg_20210824_120353

水平歩道区間、枯れたミズナラの大径木

 

Kmg_20210824_120446

同ミズナラの根本。雨でフラスが流れている

 

Kmg_20210824_121308

水平歩道区間、枯れたミズナラの大径木

 

●移入植物のオオバコ類はEコースの随所で見られた(上図、赤色のマル印)。

 

Kmg_20210824_091354

浅黄塚東側自然林入り口、移入植物のオオバコ類

 

Kmg_20210824_124502

南山休憩所、移入植物のオオバコ類

 

●ミズキやリョウブにニホンジカの採食と思われる樹皮はぎが見られた(上図、黄色のマル印)。

 

Img_20210824_091155_dro

浅黄塚東側自然林入り口近く、ミズキの樹皮はぎ

 

Kmg_20210824_142101

御胎内、リョウブの樹皮はぎ

 

●林床植生が貧弱となり見通しが良い登山歩道1.5合周辺で、スズタケの実生を確認した(上図、緑色のマル印)。

 

Kmg_20210824_104750

登山歩道1.5合周辺、スズタケの実生

 

Kmg_20210824_113319

 

 

 

動物

登山歩道1.5合付近では、ニホンジカ、ニホンアナグマ、ハクビシンが記録されていた。4月末から8月末の4ヶ月間の記録で、大半はニホンジカの♀または幼獣だった。本年初夏に生まれた当歳子も記録されている。

 

Img_0203

ニホンアナグマのペア

 

Img_0218_20210915151101

尾が長いハクビシン

 

Img_0788

今年誕生したニホンジカとその母ジカ

 

Img_0927

8月に初めて記録されたニホンジカ♂

 

 

 

ゴミ回収 29個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

3.プラ 9 弁当 1 菓子容器 4 破片 4
5.ビニール 18 6 破片 12
6.鉄 2 その他 2

 

 

| | コメント (0)

2021年5月18日 (火)

環境パトロール (2021-06) 自然休養林のハイキングコース I

日時 2021年(令和3年)5月15日(土)  8:30 - 12:30
区域 自然休養林Iコース(御殿場口新五合目・幕岩・二ツ塚)
天候 曇り/ 晴れ
山頂 (8時) 気温0.2℃、湿度 58%、647.5hPa
河口湖 (8時)上空4km WNW, 6m/s

 

 

昨年11月の合同環境パトロール以来6ヶ月ぶりに、自然休養林Iコース(御殿場口新五合目・幕岩・二ツ塚・御殿場口新五合目)を巡回した。

御殿場ガイド協会初代会長の川口さんをお招きし、コース周辺の植生などを解説いただいた。貴重なお話ありがとうございました。

 

御殿場口五合目へのアクセス道路が4月末に開通し、来訪者は多かった。Iコースで出会った来訪者は12人。御殿場口駐車場では10名を超えるトレイルランナーのグループに出会った。

 

 

御殿場口新五合目駐車場

2019年の開山期とは違って、御殿場口新五合目の第一駐車場を利用できた。新五合目のトイレは新たにエコトイレにリニューアルされ来訪者の便宜が図られていた。御殿場市在住のエコレンジャーSさんに、エコトイレを解説してもらった。質疑応答で、数年来、御殿場市やトレイルステーションにお願いしている「携帯トイレ回収BOXの常時設置とトレイルステーションでの携帯トイレ販売(もしくは、協力金のお礼に配布)」が話題となった。

 

Kmg_20210515_082239

リニューアルされたエコトイレの説明。

 

Kmg_20210515_114531

昼の第一駐車場

 

 

歩道とその周辺環境

20210515map_gpt_f_np

荒廃が多い箇所ほど濃い赤で表示、森林計画図、国立公園図

 

 

荒廃箇所は樹林帯の「傾斜地」に集中している。特に、Iコースの御殿場口新五合目・幕岩間。また、幕岩近くのFコース世界文化遺産「須山口登山道」の幕岩上・須山口下山歩道一合五尺間。ともに、歩道の拡幅や複線化と樹木根や植生損傷が目立った。

水切りの設置など補修作業は定期的に行われている。しかし、近年は衝撃が大きな集団走行やランナーのタイムトライアル、大勢の来訪者など歩道や周辺への負荷が急増しているため保全が追いつかない。

踏みつけを避ける木道設置やガイドロープによる誘導など歩道周辺の植生保全により、来訪者に安全安心で変化に富んだ自然に親しめる、質の高い自然体験が提供できるようお願いしたい。

 

1)Iコースの御殿場口新五合目・幕岩間

Kmg_20210515_113758

根の損傷、複線化部分の拡幅

 

Kmg_20210515_113724

根の損傷、複線化部分の拡幅

 

Kmg_20210515_113646

根の損傷、侵食段差

 

Kmg_20210515_113358

根の損傷、歩道拡幅

 

Kmg_20210515_113344

歩道侵食、複線化、植生損傷

 

Kmg_20210515_113249

根の損傷、歩道拡幅、侵食段差

 

Kmg_20210515_113110

根の損傷、歩道拡幅

 

Kmg_20210515_113039

根の損傷、歩道拡幅

 

Kmg_20210515_112930

ミズ道化、歩道拡幅

 

Kmg_20210515_112823

歩道侵食、路肩通行による植生損傷

 

Kmg_20210515_112606

歩道侵食、根の損傷、複線化

 

Kmg_20210515_112544

歩道拡幅、根の損傷、植生損傷

 

Kmg_20210515_112442

根の露出損傷、歩道複線化

 

Kmg_20210515_112411_20210914164001

根の露出損傷、歩道複線化

 

Kmg_20210515_112345

根の露出損傷、歩道拡幅、植生損傷

 

Kmg_20210515_112251

歩道侵食、複線化

 

Kmg_20210515_112202

根の露出損傷、歩道拡幅、植生損傷

 

Kmg_20210515_112120

根の露出損傷、歩道拡幅、植生損傷

 

Kmg_20210515_111916

根の露出損傷、歩道複線化、植生損傷

 

Kmg_20210515_111817

根の露出損傷、歩道複線化、植生損傷

 

Kmg_20210515_111755

根の露出損傷、歩道複線化、植生損傷

 

2)幕岩近く世界文化遺産「須山口登山道」の幕岩上・須山口下山歩道一合五尺間

幕岩近く世界文化遺産に登録された須山口下山歩道は、小さな尾根を緩やかに蛇行しながら登っている。協議会の標準補助標識も設置されている。その歩道の東側に、2013年の大規模トレイルラン・レース前後に直線的な踏み跡が付けられ、以降、その踏み跡を来訪者が利用し複線化した。この迂回路の東側、砂沢右岸は崩壊が年々拡大し、最短距離で約20数mまで迫っている。また、その上部では、直線的な踏み跡が加わり、本来の歩道の拡幅、複線化が生じている。世界文化遺産の歩道整備と、保全を前提とした利用が要請される。

 

Kmg_20210515_102822

幕岩分岐より北、歩道拡幅、植生損傷

 

Kmg_20210515_103047

分岐より南、本来の細い歩道が拡幅、樹木根の損傷

 

Kmg_20210515_104809

歩道複線化、樹木根損傷、植生損傷

 

Kmg_20210515_104754

歩道拡幅、複線化、植生損傷

 

Kmg_20210515_104650

歩道直線化、植生損傷

 

20130428c5

同地点、2013年4月、UTMF直後に直線化

 

Kmg_20210515_103540

歩道複線化、直線化、樹木根や植生損傷

 

20130428c1

同地点、2013年4月、UTMF直後、左側が歩道

 

Kmg_20210515_105701

歩道東側、崩壊が進む砂沢右岸

 

 

幕岩から尾根上の幕岩分岐(須山口下山歩道)へつなぐ斜面の歩道は、2020年7月、同11月と比べ、侵食箇所の補修や新たなガイドロープ設置、締め直しなど整備されていた。崩落が進む砂沢右岸と同様な地質を持つこの急傾斜地に付けられた歩道は、定期的な補修にかかわらず、侵食と来訪者の踏圧によって荒れやすく、丸太階段が損傷し、複線化や拡幅、さらに周辺の植生損傷が起きやすい。

 

Kmg_20210515_104853

階段補修が遅れ歩道拡幅、植生損傷

 

Kmg_20210515_104936

階段の施工が難しく、侵食、植生損傷

 

Kmg_20210515_105120

丸太階段は再整備されるが、歩道拡幅や植生損傷が見られる

 

Kmg_20210515_105201

再整備された丸太階段

 

年々進む砂沢右岸の崩壊や過去の侵食状況から、急斜面の階段歩道は、現状では、これからの雨シーズンに侵食が一気に進む。通行困難な箇所を避け、歩道外への踏み出し(拡幅や複線化)によって、来訪者の通行へ悪影響を与え、歩道周辺の貴重な植物を損傷する恐れがある。大勢の来訪者の踏圧に耐えるには、専門家による調査を行い、本格的な整備が必要ではなかろうか。

 

 

施設

毎年の環境パトロールの度に報告している「二ツ塚下塚山頂の崩壊が進む石碑」、「歩道に露出しているワイヤーケーブル」、「大石茶屋西側の残置タイヤ群」は、そのままだ。

Kmg_20210515_095243

二ツ塚下塚山頂の記念碑壁の崩壊

 

Kmg_20210515_095226

同、基部の露出が進む金鳥居

 

Kmg_20210515_092951

歩道にワイヤー再露出

 

Photo_20210914172301

大石茶屋西側の残置タイヤ群

 

 

その他気づいた標識類。補修や配置などの再検討が望まれる標識、撤去が必要な私的マーキングなど。

 

Kmg_20210515_094702

二ツ塚の協議会標準標識の摩耗

 

Kmg_20210515_100324

二ツ塚・四辻間の標準標識一部破損

 

Kmg_20210515_100617

四辻近く、歩道を外れた石にペイント

 

Kmg_20210515_101133

四辻・幕岩間、表示のない案内板

 

Kmg_20210515_102543

幕岩上、標準標識と目立つ私的マーキング

 

Kmg_20210515_114500

御殿場口近く、損傷した標準標識

 

 

 

動植物

a)外来植物、移入植物

火山荒原では、外来植物のセイヨウタンポポが開花していた。多いところでは、一つのパッチに12個開花していた。樹林帯では、移入種のオオバコがみられた(下図参照)。来訪者が多い御殿場口新五合目駐車場付近では、セイヨウタンポポ類の駆除や駐車場の歩道入り口や樹林帯入り口付近に外来種や移入種の侵入防止対策(外来植物の注意喚起や外来植物防除マットなどの設置)が必要だと思う。

 

20210515map_e

黄色の丸は外来植物、移入植物の確認地点、背景は環境省の植生図

 

Kmg_20210515_092140

外来種のセイヨウタンポポ

 

Kmg_20210515_111706

移入植物のオオバコ

 

 

 

b)ニホンジカの食痕

 火山荒原では、カラマツの幹、枝にニホンジカによると思われる樹皮はぎや枝先の枯れがみられた。樹林帯では広葉樹の幹や根際や林床植物に食痕がみられた。

 

20210515map_ap

赤色の丸は食痕の確認地点、背景は環境省の植生図

 

Kmg_20210515_100347

カラマツの樹皮はぎ

 

Img_20210515_090230

樹林帯広葉樹の樹皮はぎ

 

Img_20210515_090306

根際の食痕

 

 

Kmg_20210515_111729

ナナカマド樹皮はぎ

 

 

 

ゴミ回収  22個 (ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 2 紙片 2
2.布 3 衣類 2 切れ端 1
3.プラ 9 菓子容器 3 破片 4 その他 2
5.ビニール 1 紐    1
6.鉄 6 飲料缶 6
8.ゴム 1 その他 1

 

 

| | コメント (0)

2021年4月28日 (水)

環境パトロール (2021-03) 自然休養林のハイキングコースD/E

日時 2021年(令和3年)4月24日(土) 13:00 - 16:00
区域 休養林のD/Eコース(水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合)
天候 晴れ
山頂 (13時) 気温-4.4℃、湿度 5%、643.1hPa
河口湖 (13時)上空3km N, 6m/s

 

 

富士山自然休養林D/Eコース(須山口登山歩道)を、水ヶ塚公園から須山口登山歩道1.5合目まで往復環境パトロールした。このコースは多くの来訪者が利用している。侵食が進み、歩行が困難な従来からの登山歩道周辺には、通過しづらい箇所を避けた、ピンク色テープの私的マーキングに誘導された踏み跡がある。

このピンクの私的マーキングは昨年秋に増えたが、誰が設置しているのか管理者名はない。水ヶ塚公園から須山口登山歩道1.5合目間の約半分は、国有林の「富士山生物群集保護林」を通過している。

ピンク色テープに誘導された踏み跡は、従来の登山歩道を外れて、「富士山生物群集保護林」内のスズタケが消失し見通しが効く林床の植生を損傷している。踏み跡は既に複線化している部分もある。また、踏み跡がミズ道化して新たな侵食による林床荒廃の恐れがある。

 

水ヶ塚公園駐車場の車は、12時頃60台程度。パトロール中に来訪者15人に出会った。単独の男性11人(内1人は実際に走っていた。1人は登頂者)、男女のペア2組。

 

Img_20210424_155035

16時頃の水ヶ塚公園駐車場

 

 

従来からの須山口登山歩道

相変わらず、登山歩道の侵食が進んでいる。しかし、昨年11月に自然休養林Fコース(須山口下山歩道)にあった「石を並べた水切り」が、今回のパトロール・コースでも見られた。また、昨年10月に歩いた際に、段差が大きく歩きづらかった箇所は少しづつ歩きやすくなったと感じた。歩道の補修が行われているようだ。富士山自然休養林保護管理協議会の本格的な歩道整備というより、歩道や周辺植生の保全に関心が高い方の尊い志かもしれない。

 

Img_20210424_133720

侵食で大きな根が露出、この地点は補修必要

 

Img_20210424_134233

UTMF後に右側の路肩が崩れた歩道。奥の段差が減少

 

Img_20210424_134339

同、土砂が流れたのか傾斜が緩くなり歩ける

 

Img_20210424_134637

過去に保守され今も歩ける従来の登山歩道

 

Img_20210424_135634

この段差も歩けたが、石を埋めるなど補修必要

 

Img_20210424_135812

歩道上に石が並ぶ。歩道の水切りと来訪者の歩きやすさ

 

Img_20210424_140532

須山口1.5合目にも同様な水切り

 

Img_20210424_132606

水ヶ塚公園に近い人工林の斜面にも水切り

 

Img_20210424_140605

老朽化が進む須山口1.5合目のベンチ

 

 

ピンク色テープに誘導された踏み跡

富士山自然休養林を通過する須山口登山歩道(D/Eハイキングコース)には、他の自然林ハイキングコースと同様に、富士山自然休養林保護管理協議会によって標準標識が設置されている。さらに須山口登山歩道保存会の標識も設置されている。しかしながら、浅黄塚への分岐から須山口1.5合目までの比較的長い600mの区間には、行き先を表示した標準標識は見当たらない。

ところがこの浅黄塚への分岐から須山口1.5合目までの区間には、管理者名や行き先が表示されないビニールテープのマーキングが多数見られる。この私的なマーキングは、歩道外へ踏み出し、ニホンジカの食害などによりスズタケが消失し、見通しが効く林床を直線的に通る踏み跡へ誘導している。これらビニールテープ・マーキングの多くは、2020年7月や9月の環境パトロール時には見られず、10月頃に設置されたようだ。

この区間は、トレイル・ランナーによる、タイムトライアル・レースが行われている。また、裾野市の「準高地トレーニング」のトレイルラン・コースにも選定されている。歩道外の保護林内に私的マーキングが設置され、通行誘導が行われているため、林内のいたるところで植生が踏み荒らされている。この踏み跡はミズ道となり新たな侵食が引き起こされる恐れがある。さらに、他の来訪者も、その踏み跡を利用してしまい、結果的に本来の登山歩道が保全されないまま放置される。

この区間は、国有林「富士山生物群集保護林」に指定されている。この保護林の設置目的は林野庁のホームページに以下のように示されている。

「富士山の山腹には、日本の低山帯から高山帯にわたる植生の垂直分布が模式的に存在し、太平洋気候区の典型的な森林として維持されている。低山帯には、ブナ、ミズナラ、カエデ類等の落葉広葉樹を主体とした天然林が成立し、亜高山帯には、カラマツ、イラモミ、ウラジロモミ、コメツガ、シラビソなどを主体とした天然林が成立している。また、丸尾と呼ばれる溶岩流上には、ヒノキ純林の特徴的な群落が形成され、スコリアの堆積地には、火山荒原草本群落が形成されている。このため、当該地域の代表的なこれらの群落を主体とする地域固有の生物群集を有する森林を保護・管理することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護、森林施業・管理技術の発展、学術の研究等に資するため設定する」

 

この保護林内の登山歩道について私達エコレンジャーは、過去何回も環境パトロールを実施した。登山歩道に通行困難な箇所があり、歩道外に幾筋もの踏み跡ができ、複線化し、植生損傷が見られ、来訪者の道迷いも報告されていることから、本来の歩道や周辺植生の保全対策を進めてもらいたいと重ねて要請してきた。

来訪者の道迷いを防ぎ、「富士山生物群集保護林」の設置目的に則した保全利用になるように、森林管理署や富士山自然休養林保護管理協議会は、本来の歩道を修復し、私的マーキング設置者を指導し、標準標識の設置をお願いしたい。

 

 

Photo_20210914130501

 

 

Img_20210424_133459

①目立つビニールテープで登山歩道を外れ、林内に誘導

 

Img_20210424_152856

②樹木の根が露出し踏みつけられ損傷。白い部分はニホンジカの食痕

 

Img_20210424_134123

③左端の登山道を外れ、樹木根を著しく損傷し林内に誘導

 

Img_20210424_152807

④樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_152713

⑤樹木根の露出と侵食、ミズ道化

 

Img_20210424_152707

⑥樹木根の露出と損傷、ミズ道化

 

Img_20210424_152631

⑦樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_152616

⑧樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_152600

⑨樹木根の露出と損傷、ミズ道化

 

Img_20210424_152530

⑩樹木根の露出と損傷、複線化

 

Img_20210424_152424

⑪樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_152403

⑫樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_152326

⑬樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_152126

⑭樹木根の露出と損傷、樹木根下の空洞に石積み

 

Img_20210424_152018

⑮樹木根の露出と損傷

 

Img_20210424_151923

⑯樹木根の露出と損傷

 

 

動植物

ニホンジカの目撃はなく、鳴き声もきかなかった。しかし、登山歩道に入ってウラジロモミの植林地から自然林にかけて、歩道脇の樹木根際にニホンジカの食痕と思われる痕跡が数多くみられた。

 

20240424_pm_map_ap

橙色の丸は食痕確認地点、地理院地図、静岡県CS立体図、環境省植生図

 

Img_20210424_132611

根際や根を噛じられた樹木が多く見られた

 

Img_20210424_133854

歩道脇のシロカネソウ

 

 

ゴミ回収 15個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 1 タバコ吸い殻 1
3.プラ 3 菓子容器 3
5.ビニール 10 1 破片 8 その他 1
6.鉄 1 アルミ飲料缶 1

 

 

 

| | コメント (0)

2021年4月26日 (月)

合同環境パトロール (2021-02) 須山口登山歩道・黒塚

 

日時 2021年(令和3年)4月24日(土) 8:00 - 12:00
区域 須山口登山歩道(弁当場・フジバラ平・大調整池・黒塚)
天候 晴れ
山頂 (8時) 気温-5.7℃、湿度 13%、643.5hPa
河口湖 (8時)上空3km ENE, 7m/s

 

 

須山口登山歩道の弁当場から、沢沿いにフジバラ平、大調整池へ至り、御釜塚東側の谷侵食状況を見て黒塚を経て弁当場へ帰る、今年度最初の合同環境パトロールに参加した。同コースは、私達の「マウントフジ・トレイルラン植生保全環境調査」地で、2012年以来継続観察している。

新型コロナ感染症対策で、調査経験組と未経験組に別れ、未経験組は、土壌硬度の測定を体験した。

弁当場周辺に2組の来訪者がいた。環境パトロール中は、健脚の男性1名、野鳥撮影の男性1名に出会った。

 

Dsc_0024

合同環境パトロール参加者

 

 

ニホンジカ

黒塚・須山口登山歩道周辺では、毎冬、数多くのニホンジカの生息や食害が記録されている。今回はニホンジカの痕跡がはあまり目立たなかったが、送電線(東電田代幹線)下の伐採地では、ミツマタの枝先の採食が目立った。弁当場の近くでは、樹木の根際が尖ったものでくり抜かれていた。ニホンジカ角研ぎだろうか?

 

Img_20210424_085809

ミツマタの枝先採食、送電線下の伐採地

 

Img_20210424_112147

ニホンジカ角研ぎか、弁当場近く

 

 

外来植物

フジバラ平調整池周辺や大調整池周辺では、開花前の外来植物「ハルザキヤマガラシ」が数多くみられた。大調整池南東側の歩道周辺で開花した外来植物の「セイヨウタンポポ」が見られた。

 

Img_20210424_100257

外来種「ハルザキヤマガラシ」。大調整池東側

 

Img_20210424_093734

外来種と大型ゴミが多いフジバラ平調整池周辺

 

Img_20210424_100211

外来種「セイヨウタンポポ」。大調整池南東側

 

 

ナラ枯れ

フジバラ平北側では、比較的狭い区域にまとまってミズナラの「ナラ枯れ」が見られた(5本)。弁当場近くでもミズナラの「ナラ枯れ」が見られた(5本)

 

Img_20210424_103650

ミズナラの「ナラ枯れ」。根際にフラス(木くず)。フジバラ平北側

 

Img_20210424_103711

同、フジバラ平北側

 

Img_20210424_112755

同、弁当場近く

 

 

 

歩道

フジバラ平と大調整池間の須山口登山歩道や黒塚の急傾斜歩道は、2012年から2016年にかけて毎年大規模トレイルラン・レース(UTMF)にコース利用され、750名~1800名のランナーの連続踏圧によって大きく荒廃した。それらの歩道は、保全作業にも関わらず、その後も年々侵食が加速している。

 

エバーグリーン道路から弁当場へのアクセス道路は昨年、通行止めになるほど荒廃した。今回、この区間は重機を使って補修、整備された。弁当場に水汲みに来たり、車をとめて散策を楽しむ来訪者にはありがたい。また、弁当場から沢沿いの登山歩道は補修中のようだ。

 

Img_20210424_113041

整備が行われた弁当場へのアクセス路

 

Img_20210424_082235

整備中の弁当場からの沢沿い須山口登山歩道

 

 

送電線(東電田代幹線)下の伐採地を通る登山歩道は、斜面の侵食、土砂ずれ落ちが進んだ。また、2019年に従来の登山歩道の斜面上部につけられた迂回路は進入口が分かりづらく、斜面下の沢底にピンク色のテープが付けられ、迂回の踏み跡ができていた。また、ここから西北西約180mの地点で登山歩道を外れ斜面を登るようテープ誘導されていた。これらのテープには、管理者名は表示されていない。斜面の傾斜線方向に付けられた踏み跡は、ミズ道になり更に侵食の引き金となる恐れがある。

 

Photo_20210912143501

 

大規模トレランレース(UTMF)に繰り返し使用された歩道周辺では、レースによってエグられた箇所の侵食が進み、歩道が複線化したり拡幅し、樹木の根が露出している。場所によっては、樹木の倒壊や斜面の流出につながる恐れがある。黒塚ほどは急斜面でない、弁当場からフジバラ平を経由し、大調整池に至る歩道でも侵食が進み、樹木の根が露出し、周辺部の裸地化が進んでいる箇所もある。

大規模トレイルラン・レースの過度の踏みつけや侵食によって裸地化が進むフジバラ平近くの定点観測地点「小沢」では、歩道中央部の土壌硬度が3.0~3.5kgfcm-2(指標が15~16mm)程度と比較的大きな(硬い)値を示し、過去の2016年の0.58kgfcm-2、2017年の1.12kgfcm-2とは異なる状態だった。これは、ここしばらく晴天が続き、歩道の表層が乾燥していたことが影響していると思われる(歩道周辺の植生部は1.4kgfcm-2と比較的柔らかい)。

また、歩道沿いにはシカの樹皮はぎによる枯損木が多く、歩道に倒れている箇所があった。涸れ沢の岸が崩落し、落ちた樹木が倒れて歩道を塞いでいる箇所もあった。

 

Img_20210424_085307

歩道侵食、樹木根の露出、損傷、黒塚北東

 

Img_20210424_090325

UTMF通過後の倒れた樹木、黒塚北東

 

Img_20210424_091635

UTMF後更に荒廃した斜面、黒塚北東

 

P1100270

同、2016年9月UTMF雨天決行後

 

Img_20210424_092122

裸地化が進む「小沢」。土壌硬度で計測を実習。黒塚北東

 

Imgp4077n

同、2016年9月UTMF雨天決行後

 

Img_20210424_094645

UTMF後歩道が荒廃し歩道拡幅、フジバラ平北

 

Img_20210424_095134

UTMF後樹木根が露出、損傷、御釜塚東

 

Img_20210424_095320

侵食、根の露出、右側は危険な崖御釜塚東

 

Imgp4101n

同、2016年9月UTMF雨天決行スリップ多発

 

Img_20210424_100836

根本が崩落し歩道にかかる倒木、大調整池北東

 

Img_20210424_111037

歩道にかかる倒れた枯損木、黒塚東

 

 

階段などの施設

御釜塚北東の崩壊が進む崖上の迂回路や黒塚にUTMF実行委員会が現状復旧として設置した丸太階段は、補修のたびに打ち込む立杭が斜面の土壌強度を弱める上、樹木を未加工のまま使用し、腐食しやすく、工法、丸太材ともに、地形・地質・気象など環境条件に合わず、数年のうちに不安定で危険になるものがある。

 

2019年9月にUTMF実行委員会は黒塚の歩道で2016年の最終レース後3度目の修復作業を行った。黒塚の丸太階段は部分的に補強された。黒塚北側斜面の丸太階段は現在でも安定しているものが多いが、南側斜面では、補修されず腐食したり、丸太階段下の法面が侵食し、不安定な階段が見られた。丸太材は自然木のままで防水・腐食処理はない。過去7年間観察し、レース実行委員会へ伝えてきたように、自然木のままでは数年で腐食し、不安定で危険な階段になることが危惧される。実際、黒塚南側斜面に設置された丸太階段に体重をかけると丸太が折れたり、丸太が移動し転びそうになった。

 

Img_20210424_105408

侵食が進む丸太階段周辺、黒塚北斜面

 

Img_20210424_110525

腐食と法面侵食が進み折れた丸太階段、黒塚南斜面

 

Img_20210424_111447

腐食で移動し滑りやすい丸太階段、黒塚南鉄塔脇

 

 

対照的に大調整池北側、旧ゴルフ場横に2012年第一回の大規模トレイルラン・レース開催以前から設置された丸太階段は、丸太材に防腐処理がされ、立杭にも防腐処理された金属が使われている。年間雨量が3,000mmを超える富士山南麓では、気象条件に対して耐久性がある施工が必要だ。

 

Img_20210424_101013

防腐処理された丸太階段、旧ゴルフ場脇

 

 

御釜塚北東の崩落が進む崖に設置された迂回路の丸太階段(2014年設置)では、立杭の増加、丸太材の腐食、丸太下の法面侵食が進み、来訪者は歩き辛い丸太階段を避けて階段脇を通り、歩道複線化が進んだ。

 

Img_20210424_095618

立杭の増加、法面侵食、御釜塚東側崩壊崖迂回路

 

 

2018年に登山歩道保存会やボランティアによって、設置された大調整池下流の丸太階段や侵食止めは2020年には流出していたが、さらに侵食がすすんだ。「自然環境が厳しい富士山南麓側火山地帯では、歩道や周辺環境の保全管理は一筋縄ではいかない」ということを教えられる。

 

Img_20180615_011230

大調整池直下。2018年。迂回路としてつくられた丸太階段

 

Img_20210424_100035

同、侵食が進み丸太階段が流出した大調整池直下

 

 

御釜塚東側の崩壊谷

崩壊が進む崖直上の歩道は2012年にUTMFで使われ、2013年には通過が危険となり、急場のシカ道を使った迂回路を使われた。2014年に新たに丸太階段の迂回路がつくられた。この崩壊が進む谷は、御釜塚の北東を鋭く侵食している。

 

Img_20210424_102157

崩壊が進む御釜塚北東の崖、対岸から

 

Img_20210424_095846

崩落した旧登山道

 

 

ゴミ回収 56個 (ゴミ収集記録調査票に対応)

 

3.プラ 44 弁当 4 菓子容器 5 破片 35
4.発泡スチロール 2 破片 2
5.ビニール 6 衣類 1 5
6.鉄 4 飲料缶 2 その他 2

 

 

| | コメント (0)

2020年12月28日 (月)

環境パトロール (2020-12) 自然休養林(8)

日時 2020年(令和2年)12月23日(水) 9:20 - 15:30
区域 富士山自然休養林D/E、Kコース
天候 晴れ
山頂 (8時) 気温-18.8℃、湿度 27%、633.3hPa
河口湖 (8時)上空2km NW, 13m/s

 

 

 

富士山自然休養林ハイキング・コースD(問合せ先:裾野市)、E(同、御殿場市)、K(同、裾野市)を水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目、浅黄塚、腰切塚、水ヶ塚公園で巡回する環境パトロールを行った。

Kコースは展望台改修工事中で、工事中は利用できない旨、自然休養林管理保護協議会のホームページで周知されている。歩道周辺の私的マーキングの設置状況や植生状況(ナラ枯れやスズタケなど)について確認するために巡回した。12月5日の環境パトロールで見た富士山の雪は、ほとんど消えていた。

 

Dsc01158

ぐみさわから、南麓の宝永沢、獅子岩、成就沢の起伏が明瞭

 

Dsc01214

水ヶ塚公園から、ほとんど雪が消えた

 

 

D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月の環境パトロールで報告した状態とほぼ同じだった。侵食段差などで歩きづらい本来の歩道を避け、国有林保護林内で目立つ多数の私的マーキングに誘導され、歩道外の林内植生を直線的に通過する踏み跡を来訪者が利用しているようだ。早期の対応をお願いしたい。

この区間の自然林入口付近、標高1,490m地点で、ナラ枯れのミズナラを確認した。この区間や旧作業道、旧歩道周辺は、スズタケの実生が一部は見られるものの、大半はスズタケが消失し、見通しが効く林内となっている。また、腰切塚西側では、枯れたスズタケの桿が多いが、場所によってはスズタケの実生が群生していた。ニホンジカは目撃せず、糞など新しい痕跡は少なかった。

浅黄塚の南東側で大きな侵食が目立った。

パトロール中、来訪者に出会わなかった。水ヶ塚公園駐車場の車は朝8時は2台、13時頃は約10台程度だった。

 

Img_20201223_083821

8時の水ヶ塚公園駐車場

 

Img_20201223_125427

13時の水ヶ塚公園駐車場

 

 

歩道

D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月に報告した状態とほぼ同じだった。来訪者は侵食段差などがある本来の歩道を避け、多数の目立つ私的マーキングに誘導され、保護林内の植生を直線的に通過している。このままでは、さらに多くの来訪者が国有林の富士山生物群集保護林内に踏み込み、樹木の根など植生を損傷するおそれがある。長く使われてきた須走口登山歩道の補修や私的マーキングの撤去など、歩道や周辺自然環境の保全管理を早期にお願いしたい。

 

Img_20201223_091236

左の登山歩道を外れ、植生内に新たな迂回の踏み跡

 

Img_20201223_091801

左の登山歩道を外れ、樹木の根を損傷する迂回の踏み跡

 

Img_20201223_093232

左の登山歩道を外れ植生内に新たな迂回の踏み跡

 

Img_20201223_093646

右の登山歩道を外れ、植生内に新たな迂回の踏み跡

 

 

浅黄塚東側の旧歩道周辺も、スズタケが消失し、踏み跡は、かすかで分かりづらい。赤い布の私的マーキングがあり、スカイライン方面へ誘導している。涸れ沢は侵食が激しい場所で約2mの段差がみられた。

 

P1020574

2006年10月、背丈以上のスズタケに囲まれた旧歩道

 

Img_20201223_113527

今はスズタケが消失し、どこでも歩ける

 

Img_20201223_114845

旧歩道が涸れ沢となり、激しい侵食段差2m

 

Img_20201223_115524

涸れ沢の侵食部分、樹木の大きな根の下を穿つ

 

 

腰切塚南側のKコースの歩道は、展望台改修工事用に幅が約2mに拡大され簡易舗装されていた。

 

Img_20201223_124223

工事用に道幅を広げ簡易舗装

 

Img_20190709_113015

2019年7月、Kコース南側歩道

 

 

腰切塚東側のクロカン・コースでは、ウッドチップがコース外へ流出したままで、スズタケの実生部分に達していた。

 

Img_20201223_125344

クロカンコースのウッド・チップは流出したまま

 

 

須山口登山歩道1.5合目にある木製ベンチの老朽化が進んでいる。ここは、よく休憩に利用されており、Eコースの南山休憩所など他の施設とともに改修をお願いしたい。

 

Img_20201223_094733

須山口登山歩道1.5合目の木製ベンチ

 

 

標識

水ヶ塚公園から登る須山口登山歩道入り口にある協議会標準標識に、自然休養林内の立入り禁止コースの表示はなかった。同協議会のホームページには、立入禁止のA、B、J、Mコースの全面利用不可や一部利用不可、さらにKコースの工事中利用不可が明示されている。現場の案内図でも明示してほしい。同案内図近くに設置されていた協議会の「熊出没注意」の掲示板が破損して、注意情報が来訪者に伝わらない。

 

Img_20201223_084101

須山口登山歩道入口の自然休養林案内図

 

Img_20201223_084221

同地点付近の協議会の「熊出没注意」の掲示板が破損

 

 

私的マーキング

D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月の環境パトロールで報告した状態とほぼ同じだった。侵食段差などで歩きづらい本来の歩道を避け、国有林保護林内で多数の目立つ長いビニールテープの私的マーキングが林立している。これらのビニールテープは、通常の歩行では自然景観の中で煩わしく感じるほど、視認に必要以上の長さと頻度で設置されている。走行など一瞬で行き先を確認するために設置されたと思われる(この区間はネット上で多くのトレイルランナーが走行時間を競うタイムトライアル区間となっている)。歩道外の林内植生部分に付けられたこれらの私的マーキングに誘導され、林内の植生部分を損傷しながら直線的に通過し踏み固められている。このままでは、さらに多くの来訪者が私的マーキングに誘導され、踏み跡は国有林保護林内に踏み込み、植生損傷が激化し拡大するおそれがある。また、この踏み跡は直線的でミズ道化しやすく、あらたな侵食が広がりかねない。さらに、歩道の保全管理主体が曖昧となり、見通しが効く保護林内に新たな踏み跡を作りかねない。長く使われてきた須走口登山歩道の補修を進め、私的マーキングの撤去など、歩道や周辺自然環境の保全をすみやかに対応いただくようお願いしたい。

 

Img_20201223_091042

歩道外の林内植生部分に誘導する長いビニールテープ

 

Img_20201223_093953

必要以上に長いビニールテープの私的マーキング

 

 

ミズナラの「ナラ枯れ」

根元や幹にフラス(木屑)があり、縮れて枯れた葉が、落葉せず枝についていた。ミズナラの「ナラ枯れ」が新たに標高1,490m付近で見られた。

 

Img_20201223_090400

自然林入口付近の根元にフラスがみられるミズナラ

 

Img_20201223_090410

同ミズナラは落葉せずに縮れた枯れ葉が枝についたまま

 

 

スズタケの成長

旧東臼塚遊歩道の標高1,440m付近でスズタケの実生が群生していた(下図の黄緑の丸)。また、須山口登山歩道西側や旧東臼塚遊歩道、Kコース南側で、まばらなスズタケの実生が随所にみられた(下図の緑色の丸)。浅黄塚東南側、旧東臼塚遊歩道、Kコース南側ではスズタケの枯れた桿(かん)が残っている(下図の茶色のヒートマップ)。須山口登山歩道から旧作業道周辺では、スズタケは消失し、枯れた桿もほとんどみあたらず、見通しが効く林内となっている(下図の青色のヒートマップ)。

 

Photo_20210911161001

 

 

野生動物

今回の環境パトロール中に、ニホンジカを目撃したり、鳴き声を聞いたりすることはなかった。ニホンジカの新たな痕跡も少なく、浅黄塚北の旧作業道周辺の二箇所で比較的新しいニホンジカの糞をみた程度だ。

須山口登山歩道1.5合目付近では、10月中旬から12月までの期間、ニホンジカ、ニホンイノシシ、ニホンアナグマ、ホンドタヌキなどが記録されていた。同一箇所で行った、2007年から2013年までの記録と比較してみると、記録日数あたりの野生動物撮影回数にあたる撮影頻度がニホンジカで減少していた。

 

2

 

Img_0009

ニホンジカ♀3頭

 

Img_0218

4尖角のニホンジカ♂

 

Img_0084

1尖角のニホンジカ♂

 

Img_0010

ニホンイノシシ

 

Img_0139

ニホンアナグマ

 

Img_0336

ホンドタヌキ

 

 

ゴミ回収 32 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 1 紙片 1
2.布 1 衣類 1
3.プラ 25 ペットボトル 1 破片 22 その他 1
5.ビニール 2 紐    2
6.鉄 2 飲料缶 2
7.ガラス 1 破片 1

 

 

| | コメント (0)

2020年12月 7日 (月)

合同環境パトロール (2020-11) 自然休養林(7)

日時 2020年(令和2年)12月5日(土) 9:20 - 15:30
区域 作業道、富士山自然休養林B、A、Lコース
天候 雨、曇、晴れ
山頂 (8時) 気温-10.2℃、湿度 91%、637.8hPa
河口湖 (8時)上空3km SW, 21m/s

 

 

林道、作業道、富士山自然休養林ハイキングコースB(問合せ先:富士市)、A(同、富士宮市)、L(同、富士宮市)を大渕林道、八幡堂、高鉢駐車場、二合目林道経由で巡回する合同環境パトロールに参加した。

 

B、Aコースは、ともに立ち入り禁止が継続されている。歩道周辺の植生状況(ナラ枯れやスズタケなど)について確認するために巡回した。銃によるニホンジカ捕獲のため富士山国有林への入林禁止が年度末まで延長され、また、親子熊の出没が確認されているので、十分に注意し巡回した。

 

大渕林道から八幡堂までの歩道が侵食により、場所によっては通過困難になっていた。この区間は来訪者があるためか、踏み跡は比較的明瞭だった。設置者不明の標識や表示、ビニールテープの私的マーキングが多数見られた。登山道周辺では、ナラ枯れのミズナラが標高1,475m付近まで見られた。標高1,530mから1,650mにかけてスズタケの実生が群生していた。自然休養林Bコースでは、日沢の渡渉迂回路を分かりにくくしていた倒木の枝が払われ、迂回路が分かりやすくなっていた。西臼塚のLコースで、歩道を塞いでいた丸太が歩道外に移され、歩道が乾燥していたこともあり、複線化した迂回路を使用せずに通過できた。

 

パトロール中に来訪者に出会わなかった。水ヶ塚公園駐車場の車は朝8時は約20台、16時頃は約25台程度だった。

 

Img_20201205_155831pano

16時の水ヶ塚公園駐車場

 

 

歩道

大渕林道から八幡堂へ至る歩道に侵食による荒廃がみられた。10年前にはこうした侵食荒廃は見られなかった。現在、土のうで作られた水止めや水切りがあるが、侵食は進んでいる。八幡堂より上部では、かつて歩道を塞いでいた倒木はすべて処理され、補修関連の人手が入っているようだ。

 

Img_20201205_095404

ミズ道となり侵食がすすむ歩道

 

Img_20201205_094954

荒廃し迂回複線化、奥は水止め

 

Img_20201205_095551

通行困難な約1.2mの侵食段差

 

Img_20201205_104041

歩道を塞いでいた倒木はすべて処理されている

 

 

Bコースの日沢渡渉箇所は通行困難だが、9月には倒木で分かりにくかった迂回路で、倒木の枝が払われ迂回路が明瞭になっていた。

 

Img_20201205_123311

日沢の大規模な侵食により通行困難になった渡渉箇所

 

P1050135

同地点、2007年5月、現状より沢幅が狭く浅い

 

Img_20201205_123319

日沢渡渉箇所の迂回路。倒木の枝が払われた

 

 

Aコースでは、高鉢東側の標高1,600m付近の歩道がミズ道となり侵食が激しい。また、二合目林道から西臼塚ナラ広場への斜面では、侵食と通行により樹木根が露出し損傷している。

 

Img_20201205_132002

高鉢東側の歩道侵食段差0.6m

 

Img_20201205_142727

二合目林道~西臼塚ナラ広場、樹木根の露出・損傷

 

 

西臼塚のLコースでは歩道を塞いでいた丸太が歩道外に移され、歩道が乾燥していたこともあり、複線化した迂回路を使用せずに通過できた。いずれの箇所も、本格的な補修作業が必要と思われる。

 

Img_20201205_145133

流出丸太が移動され乾燥した本来の歩道を通行

 

 

施設・設備

西臼塚の公衆トイレは凍結防止のためと書かれて閉鎖されていた。来訪者のため、可能な限り開放してほしい。開放できない場合は、そのむね、協議会のホームページで案内してほしい。高鉢駐車場の公衆トイレは施錠されていた。

 

Dsc01086

凍結防止のため閉鎖された西臼塚の公衆トイレ

 

Img_20201205_130159

施錠された高鉢駐車場の公衆トイレ

 

 

標識

巡回した作業道に幾種類もの私的マーキングのビニールテープが見られた。スカイライン登山区間との交差箇所では、同じ場所に、多数の標識や私的マーキングが見られた。これらの標識類にはすべて標識設置者の表示はなかった。

 

Img_20201205_101835

八幡堂~スカイライン周遊区間、解れたビニールテープ

 

Img_20201205_121132

スカイライン登山区間交差、各種私的マーキングのビニールテープ

 

 

Aコースの二合目林道周辺~ナラ広場への歩道は、人工林内の侵食や樹木根の露出・損傷が進み複線化し踏み跡が分かりづらく、私的マーキングが多数設置されている。解れやすいビニールテープをガイドロープとして使ったり、枯れ木を直接赤くペイントしている。林業関係と思われる、生木の樹皮を削り白くペイントしたものも多く見られた。

 

Img_20201205_141027

二合目林道~ナラ広場、解れたビニールテープ

 

Img_20201205_142506

同、私的マーキング、倒木に直接ペイント

 

Img_20201205_142945

同、私的マーキング、2種類のビニールテープ

 

 

大渕林道のゲートやスカイライン周遊区間交差地点に、「“熊”出没中に付き危険。周辺にて目撃情報多し」表示があり、2020年8月30日撮影の子連れの母グマの写真と説明が載せてあった。森林管理署さんから連絡があった「二合目林道や六番林道でツキノワグマ出没」の件だ。高鉢駐車場のAコース入口には、「“熊”出没中、危険につき立ち入り禁止」の表示があリ、2020年5月29日撮影のツキノワグマの写真が載せてあった。

 

Img_20201205_092700

西臼塚大渕林道入口ゲートの"熊出没注意"

 

Img_20201205_130716

高鉢駐車場のAコース入口の「立入禁止」案内

 

 

 

ミズナラの「ナラ枯れ」

根元や幹にフラス(木屑)があり、木によっては、縮れて枯れた葉が、落葉せず枝についていた。ミズナラの「ナラ枯れ」が標高1,475m付近まで見られた。

 

Photo_20210910160101

 

 

スズタケの成長

Bコース周辺では、ほとんどスズタケが枯れ林内の見通しが効く。自然休養林の多くの場所で、こうしたスズタケが枯れが見られる。2005年当時は、スズタケが生い茂っていた。

 

Img_20201205_122513

スズタケが枯れ見通しが効く林内

 

Img_7347

同、2005年。背丈を越えるスズタケで見通しはない

 

 

標高1,530mから1,650mにかけてスズタケの実生が群生していた(下図の番号がついた緑丸)。また、作業道周辺では、まばらなスズタケの実生が随所にみられた(下図の緑色のヒートマップ)。作業道のスカイライン登山区間交差からBコース高鉢駐車場にかけては、スズタケの枯れた桿(かん)が残っている(下図の茶色のヒートマップ)。二合目林道から西臼塚にかけては、スズタケは枯れも含めてみあたらない(下図の青色のヒートマップ)。

ササ類(スズタケ)は数十年をかけて回復すると言われている。十数年後、歩道周辺の景観は、見通しの効く林内から、15年前のように、背丈を超えるスズタケが繁る林内へと大きく変化する可能性がある。

 

Photo_20210910160601

スズタケの成長。緑丸はスズタケ実生の群生。数字は写真の番号

 

 

ゴミ回収 12個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

2.布 1 切れ端 1
3.プラ 4 菓子容器 3 その他 1
5.ビニール 5 2 紐    3
6.鉄 1 飲料缶 1
8.ゴム 1 その他 1

 

 

Dsc01095

合同環境パトロール終了後、雨も上がり、雪をまとった富士山の景観にみとれた。

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

2020年11月16日 (月)

合同環境パトロール (2020-10) 自然休養林(6)

日時 2020年(令和2年)11月14日(土) 8:30 - 15:00
区域 富士山自然休養林F、Iコース
天候 晴れ
山頂 (8時) 気温-8.0℃、湿度 5%、645.6hPa
河口湖 (8時)上空2km NNW, 10m/s

 

富士山自然休養林ハイキング・コースF(問合せ先:御殿場市)、I(御殿場市)を須山御胎内入り口、幕岩上、四辻、二つ塚下塚、御殿場口新五合目、幕岩、須山口下山歩道1.5合、須山御胎内入り口の順に巡回する合同環境パトロールに参加した。

 

前日の13日、富士山自然休養林保護管理協議会のホームページで、一部利用可能のBと立入禁止のA、J、Mコース、携帯トイレの使用などか案内されたが、現地の須山御胎内入り口の協議会案内図には、同様な情報は掲示されていない。

 

Hiking20201113

富士山自然休養林保護管理協議会のホームページ

 

 

Fコースの須山御胎内入口から須山下山歩道1.5合目までは、世界文化遺産の歩道区間(須山御胎内~幕岩上)を含んでおり、歩道上に石を配置した水切りが整備されていて、歩きやすかった。須山口登山歩道や御殿庭で見られたピンク色のビニールテープは見られず、世界文化遺産の歩道にふさわしい景観となっていた。Iコースの御殿場口・幕岩間は、侵食などにより樹木根の露出・損傷が目立った。歩道脇の倒木や枯損木が伐採されていた。幕岩から須山口下山歩道へつなぐ砂沢右岸斜面の歩道は、7月末と比べ侵食箇所が整備されていた。ただ、砂沢右岸の崩れやすい斜面の歩道を木段で整備する限り、再び7月末と同様な侵食が起こり通行困難になると予想される。

水ヶ塚公園駐車場の車は、朝8時頃約20台程度で、15時頃は約70台程度だった。パトロール中に来訪者11人に出会った。二人連れが4組、単独が3人。2人はトレイルランナー。ほとんど大半が水ヶ塚、須山御胎内入口から二つ塚下塚往復のようだ。

 

Img_20201114_082433_pano

朝8時の水ヶ塚公園駐車場

 

 

歩道

Fコースの須山御胎内入口から須山口下山歩道1.5合目までは、世界文化遺産の歩道区間(須山御胎内~幕岩上)を含め、多くの箇所で、石を水切りに配置し、雨水による侵食、ミズ道化を防ぐよう整備されていた、このため、歩道上に散乱していた、つまずきやすい石が移動され、歩きやすくなった。昨年8月の状態に比較して相当手が入れられている。

 

Img_20201114_140748

歩道の片側を水切り用に石を配置

 

Img_20201114_093851

歩道脇の植生へ水を流す水切り

 

 

Fコースの歩道荒廃は、須山口下山歩道1.5合目から、幕岩への下り分岐間の世界遺産の登山道区間で見られた。本来の歩道の東側に、直線的な踏み跡が2013年の大規模トレイルラン・レース以来、来訪者に利用されている。この迂回路の東側、砂沢右岸は崩壊が年々拡大している。本来の歩道の整備が必要だ。

 

Img_20201114_094714

左が本来の歩道、右側が直線的な迂回路

 

Img_20201114_095523

歩道拡幅、複線化、樹木根の損傷の世界文化遺産歩道

 

 

Iコースでは、御殿場口五合目から樹林帯に入った斜面で、侵食による段差や樹木根の露出・損傷や複線化が見られた。

 

Img_20201114_122626

侵食、樹木根の露出・損傷

 

Img_20201114_122355

侵食、樹木根の露出・損傷、複線化

 

 

施設・設備

H/Iコースの二つ塚下塚頂上にある記念碑の周囲ブロック塀と鳥居の土台の破損が進んでいた。

 

Img_20201114_105939

二つ塚下塚頂上にある記念碑

 

Img_20201114_110030

同鳥居

 

 

H/Iコースの二ツ塚・大石茶屋間の歩道上に、旧スキー場施設のコンクリートやワイヤーは残置されたままだ。大石茶屋対岸に残置されている大量のタイヤもそのままだった。来訪者の安全や良好な景観を維持するため、撤去をお願いしたい。御殿場口新五合目の第一駐車場では、冬季は撤去されていたトレイルステーションの建物が残置されていた。

 

Img_20201114_111641

残置コンクリート

 

Img_20201114_111720

浮き上がらないよう石で押さえつけた残置ワイヤー

 

Img_20201114_112957

残置タイヤ群

 

Img_20201114_114347

トレイルステーションの建物

 

 

Iコースの御殿場口新五合目の公衆トイレがリニューアルされ、エコトイレになっていた。御殿場市は10月21日よりI、Hコースを利用可能にした。コース開放時には、来訪者の便宜のため公衆トイレも使用できるようにしてほしい。

 

Img_20201114_114256

リニューアルされた御殿場口新五合目の公衆トイレ

 

Img_20201114_114202

同エコトイレの案内板

 

 

Iコースの幕岩から尾根上の須山口下山歩道へつなぐ斜面の歩道は、7月末と比べ、侵食箇所の補修や新たなガイドロープが整備されていた。

 

Img_20201114_134632

踏み固められた歩道と新しいタイガーロープ

 

Img_20201114_135040

従来の木段は上部がロープで通行禁止、迂回部分を通る

 

 

砂沢右岸の崩れやすい斜面の歩道を木段で整備する限り、今後も7月末と同様な侵食が起こり、丸太が流出し通行困難になるおそれがある。地形。地質など環境にあった自然石を利用した石組みなどの工法も検討したほうが良い。

 

Img_20201114_130730

崩壊がすすむ幕岩南の砂沢右岸

 

Img_20201114_134632

砂沢右岸斜面の不安定な丸太木段

 

 

標識

須山御胎内入口にある保存会の新しい歩道案内図と協議会自然休養林案内図で、異なった地点に同じ「御殿庭上」の地名が使われている。

 

Img_20201114_084317

須山御胎内入口にある保存会案内図の「御殿庭上」

 

Img_20201114_084301

須山御胎内入口にある協議会案内図の「御殿庭上」

 

 

また、協議会の標準標識の中に、『御殿庭』までの所要時間を記したものがあるが、協議会の歩道案内図には地名として記されていない。『御殿庭』は「御殿庭(下)」、「御殿庭(中)」、「御殿庭(上)」、「御殿庭(入り口)」の総称であるので、来訪者にどの地点を指すのか分からない。『御殿庭』のどこを指すかによって所要時間が最大85分も変わるので「御殿庭下」と表記してもらいたい。

 

Img_20201114_103316

四辻の「御殿庭」表示

 

Img_20201114_110856

二ツ塚分岐の「御殿庭」表示

 

Img_20201114_134429

幕岩の「御殿庭」表示

 

 

須山御胎内上にある変則的な四差路に6つもの保存会標識や協議会案内図、協議会標識が設置されているが、「幕岩」方向が分かりにくい。須山御胎内上から須山御胎内入口方面へ行ったところに「幕岩」方向を示す協議会標準標識(①)、また、須山御胎内上から須山御胎内への踏み跡道に「幕岩」方向を示す協議会標準標識(②)がある。しかし、その「幕岩」方向を示す先に、水ヶ塚と幕岩との分岐があり、ここには、協議会標準補助標識(⑥)はあるものの、須山御胎内上から「幕岩」方面を示す標識がない。従って、須山御胎内入口方面、須山御胎内、水ヶ塚方面から、須山御胎内上に出たときには、「幕岩」の方向が分かりにくく、協議会の案内図(⑤)をよく見る必要がある。

 

Photo_20210909210501

 

 

H/Iコースの火山荒原に設置された協議会標準標識は、厳しい気象条件のため、表面が摩耗して読みづらかったり、一部破損しているものがあった。

 

Img_20201114_104329

四辻・二ツ塚間、一部破損した標準標識

 

Img_20201114_111348

二ツ塚・大石茶屋間、表面が摩耗した標準標識

 

 

H/Iコースの四辻・二ツ塚間、二ツ塚・大石茶屋間でオフロードバイクと思われる轍があった。二ツ塚西側では轍は植生方向へ伸びていた。最近、自然公園法の「乗り入れ規制区域」に侵入したものと思われる。二ツ塚周辺は、数十年前にオフロード車により大規模に植生が破損され、その痕が今も回復していない。火山荒原の自然環境を保全するため、来訪者に『オフロード車の乗り入れ規制』が伝わるよう、協議会の案内図などでも紹介してほしい。

 

Img_20201114_104723

植生方向へ伸びるオフロード・バイクの轍

 

Img_20201114_112609

二ツ塚方向へのびるオフロード・バイクの轍)

 

 

今回のパトロール・コースには、協議会の標準標識やガイドロープが、ほぼ適切な間隔で設置されている。また、歩道の侵食荒廃などに対して定期的な補修管理が行われている箇所が多い。そうした管理のおかげで、須山口登山歩道や御殿庭連絡道で数多く見られた私的マーキング(下図参照)が比較的少ない。特に、世界文化遺産に登録された須山御胎内・須山下山歩道1.5合目間では、昨年まで、派手なピンク色の私的マーキングが設置され、迂回の踏み跡へ誘導したため植生を損傷し、世界文化遺産の風致景観を損なっていた。しかし、今回は下山歩道が整備され歩きやすくなり、風致景観を損なう派手な私的マーキングほとんど目につかず、本来の下山歩道周辺の自然環境を体験できた。

 

私的マーキングに対しては、来訪者の道迷いの誘発や植生損傷を防ぎ、さらに風致景観を維持するため対策が必要と思う。

 

20201114map_20201109map_m

ピンクの丸は「私的マーキング」、左のパトロール・コースは2020年11月9日、右は2020年11月14日

 

 

ナラ枯れ

Fコースの須山御胎内入口近くのミズナラの幹に小孔と根元にフラス(木屑とフン)を確認した。「ナラ枯れ」と思われる。須山御胎内へ向かう歩道沿いのミズナラの根元を見たが、フラスは確認できなかった。Iコースの御殿場口新五合目から幕岩への歩道沿いのミズナラの根元にもフラスは確認できなかった。 今まで確認した「ナラ枯れ」は、西臼塚の西側駐車場近くと水ヶ塚の須山口登山歩道入り口近く、それと今回の須山御胎内入口の駐車場近だ。

 

Img_20201114_085104

須山御胎内入口付近のミズナラ、幹に小孔が見える

 

Img_20201114_085041

同、根元のフラス

 

 

ゴミ回収 26 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 4 紙片 4
3.プラ 3 菓子容器 3
5.ビニール 19 2 紐    8 破片   9

 

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

2020年11月13日 (金)

環境パトロール (2020-09) 自然休養林(5)

日時 2020年(令和2年)11月9日(月) 8:30 - 17:00
区域 富士山自然休養林D/E、C、Hコース
天候 曇り、霧雨
山頂 (8時) 気温-9.9℃、湿度 27%、632.4hPa
河口湖 (8時)上空3km W, 19m/s

 

富士山自然休養林D/E、C、Hコースを、水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合、ガラン沢、御殿庭下、宝永第二火口縁、御殿庭上、御殿庭入口、御殿庭下、登山歩道1.5合、水ヶ塚公園の順路で環境パトロールした。当日、富士山自然休養林保護管理協議会のホームページでは、御殿庭下より上部のDコース、Hコースは立入禁止だが、御殿場市のホームページではHコースは利用可能となっていた。登山歩道入口の案内から立入禁止の表示は消えていたが、ガラン沢と御殿庭下の現地と水ヶ塚公園のトイレには立入禁止の表示があった。

 水ヶ塚から御殿庭下、御殿庭入口までの区間での状況は、9月、10月の環境パトロールとほぼ同様だった。一部の歩道段差や樹木根の隙間に石が積まれていた。同区間では、ピンク色のビニールテープが増えていた。御殿庭入口から御殿庭下までの区間では、ピンク色のビニール・テープが大幅に増加した。ビニールテープが標準標識にまで付けられていた。これは、2009年のトレイルラン・レースに見られたビニールテープ急増と同様だ。御殿庭の風致景観に派手な色彩のマーキングが異様に目立った。

宝永第三火口周辺では、異なる地点の標識に同一地名「御殿庭上」が使われれていて、過去10年改善をお願いしてきたが、未だに変更されていない。来訪者の安全のため、切に対応をお願いする。

水ヶ塚公園駐車場の車は、朝8時頃6台程度。パトロール中に来訪者3人に出会った。

 

歩道

 

D/Eコースの水ヶ塚から須山口登山歩道1.5合までの区間では、本来の歩道上の歩きづらい段差の一部や樹木根の隙間に石が積まれていた。歩道補修作業の一環かもしれない。

 

Img_20201109_094703

歩きづらい大きな段差に石積み

 

Img_20201109_092808

侵食された樹木根の隙間に石積み

 

C/Bコースでは、Bコースとの分岐点(標準標識「ガラン沢」)付近の涸れ沢を渡る歩道に流出した石が堆積していた。周辺にはガイドロープがあるが、倒木などで外れて植生の中を迂回している箇所かあった。御殿庭下までの区間は、他コースに比べて侵食など荒廃は少ないが、複線化した部分があった。

 

Img_20201109_104712

倒木が歩道を塞ぎガイドロープ倒し植生部分に迂回

 

Img_20201109_112418

御殿庭近く尾根筋になると歩道の複線化

 

Cコースの御殿庭下から宝永第二火口縁までの区間に設定している定点観測地点(標高2,080m)では、2007年頃から歩道が雨水によって洗掘され、歩行困難となり(①)、カイドロープで西側を迂回(②)。迂回付近は樹木など植生が損傷し(③)、迂回路の侵食がはじまった(④)。

 

P1040382

①定点観測地点、歩道が洗掘、右側を歩行、2011年5月

 

P1010106

②洗掘拡大で左側を迂回するガイドロープ、2011年9月

 

P1040912

③左側の迂回路により植生損傷、2013年8月

 

Img_20190813_121209

④迂回側の植生損傷、2019年8月

 

Img_20201109_122206

⑤現状

 

Hコースの宝永第三火口内の歩道が毎年の宝永山方面からの砂礫流出や利用の影響などで狭く不明瞭になっていた。 宝永第三火口から御殿庭入口までの歩道は、毎年報告しているように、歩道の拡幅、複線化、樹木根の露出・損傷が見られた。Cコースと同様に、水切りが付けられている箇所があった。御殿庭から宝永第二、第三火口周辺では、比較的新しい踏み跡がみられ、立ち入り規制時も多くの来訪者が御殿庭下から上のDコースやHコースを利用したようだ。

 

Img_20201109_141419

Hコース宝永第三火口内の不明瞭な歩道

 

Img_20201109_143648

歩道の拡幅、複線化、樹木根の露出・損傷

 

Img_20201109_144003

歩道の拡幅、複線化、樹木根の露出・損傷

 

Img_20201109_144426

歩道の複線化

 

Img_20201109_144804

歩道の拡幅、複線化、樹木根の露出・損傷

 

Img_20201109_143847

水切り

 

Img_20201109_134257

宝永第二火口、第三火口鞍部の踏み跡

 

標識

 

富士山自然休養林のハイキング・コースには、富士山須山口登山歩道保存会と富士山自然休養林保護管理協議会の登山案内図・標準標識が併設されている。これらの案内板・標識のなかで「御殿庭上」という地名が異なる場所に使われ、来訪者の混乱を招いている。宝永第三火口西側のCコース(須山口登山歩道)に、保存会の「御殿庭上」(標高2270m)標識がある。一方、宝永第三火口東側、H(宝永火口縁~二つ塚~御殿場口新五合目)コースに、協議会の「御殿庭上」(標高2170m)標準標識がある。両者は直線距離にして約500m近く離れており、登山道を歩けば30分~50分の距離にある。

 

Img_20201109_132710

Cコースの保存会標識「御殿庭上」、標高2270m

 

Img_20201109_142029

Hコースの協議会標準標識「御殿庭上」、標高2170m

 

また、協議会の標識では、本来、「御殿庭下」と表示すべきところを、「御殿庭」と表示している。「御殿庭」は総称で協議会の歩道案内図に行き先地名としてはない。「御殿庭」では、「御殿庭(下)」、「御殿庭(中)」、「御殿庭(上)」、「御殿庭入り口」のいずれを指すのか分からない。総称「御殿庭」が、御殿庭入り口、御殿庭(上)、旧山体観測装置、御殿庭(中)、須山口・ガラン沢分岐の各標準標識で使われている。

 

Img_20201109_144908

左側の矢印に「御殿庭」、所要時間から「御殿庭下」か

 

Img_20201109_142029s

右手前の矢印に「御殿庭」、時間から「御殿庭下」か

 

宝永第三火口の標準標識「御殿庭上」の近くには、過去に岩に直接「ごてんにわ」と白くペイントした地名表示が残置している。

 

Dsc00830

岩に直接地名をペイント

 

Cコースは、富士山における適正利用推進協議会の「富士山における標識類総合ガイドライン」でいう、「宝永山御殿庭線」にあたり、同ガイドラインの適用範囲であり、標識や地名の統一などガイドライン遵守が要請される。利用者の安全と利便を確保するとともに、秩序ある良好な風致景観を維持及び形成するため、標識の統合と地名の統一など2011年から報告書通じて再三、改善をお願いし続けているが、対応はなく遺憾に思っている。

 

Cコース、Hコースの合流点(旧地名「山体観測装置」)の標準標識は「倒れたまま残置されている」と昨年報告したが、今回、本来の位置より、南側の斜面約30mの位置に移動していた。強風によるものと思う。

 

Img_20201109_134712

斜面を約30m移動した標準標識「旧山体観測装置」

 

昨年報告した標準標識「御殿庭上」とその南東側の標準標識の外れたり外れかかっていた誘導標識板が補修されていた。ボランティア環境パトロールで施設・設備などの損傷を報告し、それが関係者の方により補修され、来訪者の安全や便宜、自然環境の保全につながったことを確認できたときには、「やりがい」を感じる。

 

Img_20201109_142312

補修された南東側の標準標識

 

各コースには、標準標識やその補助標識、また保存会の標識がほぼ適切な間隔で設置されている。しかし、歩道が自然侵食などで歩きづらくなり、まだ補修されていない箇所には、植生部分に踏み込む迂回の踏み跡ができ、そこに目印のビニール・テープがつけられている。一方、歩道も標識も整備されている区間に、派手なピンク色の(視認性の高い)大量の私的マーキングが設置され、風致景観を損なっている。そのような200を上回る私的マーキングの位置を下図で示す。ローマ数字(Ⅰ~Ⅳ)は、同じ特徴の私的マーキング群。

 

Map

青色の線は今回のパトロール・コース、紫の丸は私的マーキング、赤色のヒートマップは歩道の荒廃箇所

 

Ⅰ群 国有林富士山生物群集保護林内。歩道に侵食による通過困難箇所があり、歩道の脇に踏み跡ができ複線化した区間。林床のスズタケが枯れ、林内の見通しが効き、どこへでも行ける。通過(走行)しやすい直線的な踏み跡を私的マーキング(ビニールや木に直接ペイント)が誘導し植生を損傷している。10月以降、私的マーキングが増加した。この区間は、トレイルランのタイムトライアルに使われている。本来の登山歩道補修が行われれば、迂回路と私的マーキングは必要なくなる。

 

Img_20201109_090912

左側の歩道を避け林内へ直線的に誘導、樹木根の損傷

 

Ⅱ群 以前あったDコースとCコースの連絡路に沿っていると思われるが、途中からマーキングは旧作業道にそって連絡路から離れている。連絡路が使われなくなり踏み跡はほとんどなく、来訪者は道迷いを起こしやすい。実際に進行方向が分からなくなった。

 

Img_20201109_101122

踏み跡もない林内へ誘導

 

Ⅲ群 ゴンバ沢の定期的な土砂流出で部分的に歩道が分からなくなっている。登山歩道を整備し、標準標識を設置するまでの期間、管理者名やコース名、行き先を明示した公共(協議会)の簡易マーキング設置が必要。

Img_20201109_160726

目立つピンク色に加えて目立たない色の私的マーキング

 

Ⅳ群 国有林富士山生物群集保護林内。国立公園第一種特別地域内。優れた風致景観の御殿庭を横断する連絡路。標準標識も適切な間隔で設置されている。9月9日以降、大量の私的マーキングが設置された。派手なピンク色テープが風致景観を損なっている。2009年11月トレイルランレース時に大量の私的マーキングが短期間に付けられた状況に似ている。状況から今回もイベント目的の私的マーキングかもしれない。

 

Img_20201109_145813

すぐれた風致景観の御殿庭、2種類の私的マーキング

 

誰が設置したか(管理責任者)、どこへ誘導しているのか(行き先)、なんのために設置した(目的)が、来訪者に伝わらない私的なマーキングが多数設置されていた。管理者名や行き先のない私的マーキングは、2018年夏、須走口で起きた「嘘の矢印騒動」と同様に、来訪者をどこに誘導しようとしているのか分からず、かえって道迷いを起こす危険がある。登山道や歩道は公共の利用を前提としている。私的マーキングを無秩序に設置することは、来訪者の安全や便宜、秩序ある良好な風致景観の維持及び形成を損なうので、来訪者のみなさまには私的マーキングは設置しないようお願いしたい。

 

 

動植物

 

御殿庭周辺の亜高山帯では、日本固有の針葉樹「シラビソ」、「トウヒ」、「コメツガ」、「ゴヨウマツ」、「カラマツ」をみた。渡邉定元さんは『富士山を知る事典』の中で、「生態学的にみて護るべき富士山域の自然をあげると次のとおりである。第一は、亜高山帯の森林植生保全である。地球生態系の視点から日本の自然をとらえると、もっとも固有度の高いのは亜高山帯の森林群落である。富士山は日本列島のなかでその代表である」と指摘している。

 

Img_20201109_122352

ゴヨウマツ

 

Img_20201109_122921

トウヒ、針葉は内側に曲がり握っても痛くない

 

Dsc00731

ハリモミ? 握ると痛くトウヒよりハリモミに近い

 

Img_20201109_130003

シラビソ

 

Img_20201109_131328

コメツガ

 

Img_20201109_131620

カラマツ、常緑の針葉樹の中で秋に黄葉し落葉する

 

黄葉の終わりを迎えていたカラマツに霧氷がつき、普段見られない景観だった。また、そのカラマツの枝にルリビタキ♀が止まっていた。

 

Img_20201109_135656

宝永第二火口、第三火口鞍部のカラマツに霧氷

 

Dsc00756

標高2250mあたりのカラマツの枝にルリビタキ♀

 

保存会標識「御殿庭上」(標高2260m)周辺のカラマツは成長し、個体数も増えている。増澤武弘ふじさんネットワーク会長の解説を思い出した。「宝永第二火口縁から南西側の調査地で森林限界がどの程度上昇したか、個体数の急増やカラマツの直立の様子でみると、森林限界は1978年の7区から2008年4~5区へ上昇している」(2016年3月富士山勉強会)。宝永第二、第三火口内の西壁や火口底のカラマツも成長し、数も増えたように思える。

 

Img_20201109_132710_20210604221801

標識背後のカラマツは樹高が高くなっている

 

Img_7558_s

2005年7月

 

一方、その標識から北へ約200m離れた宝永第二・第三火口鞍部の匍匐型のカラマツ(標高2300m)はあまり変化してないようにみえた。強風などが生育に影響しているのだろう。

 

Dsc00801s

宝永第二・第三火口鞍部の匍匐型のカラマツ

 

P1000750_s

2006年7月

 

水が塚公園からD/Eハイキングコースへの入口付近にあるミズナラの枝が枯れている。今回、根本を確認したらフラス(木屑)がついていた。カシノナガキクイムシによる「ナラ枯れ」と思われる。登山歩道を進みながら何本かのミズナラを見たが、根本にフラスは確認できなかった。

 

Img_20201109_083619

須山口登山歩道入口のミズナラ

 

Img_20201109_083641

同ミズナラの根本、フラスが確認できる

 

 

ゴミ回収 21個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 3 紙片 3
2.布 7 タオル 4 その他 3
3.プラ 7 菓子容器 1 破片 6
5.ビニール 2 2
6.鉄 2 その他 2

 

 

 

| | コメント (0)

2020年11月 2日 (月)

環境パトロール (2020-08) 自然休養林(4)

日時 2020年(令和2年)10月14日(水) 13:00 - 16:00
区域 富士山自然休養林D/Eコース
天候 曇り、霧雨
山頂 (13時) 気温 1.1℃、湿度 35%、645.5hPa
河口湖 (13時)上空4km WSW, 17m/s

 

富士山自然休養林D/Eコースを、水ヶ塚公園から須山口登山歩道1.5合目まで環境パトロールした。このコースは侵食が進み、歩行が困難な従来からの登山歩道周辺には、段差を避けた踏み跡が幾筋もあり、植生を損傷し、環境保全上の課題となっている。9月の環境パトロールで従来からの登山歩道を歩いたとき、通行困難な箇所も少し手を加えれば修復できそうだった。あらためて、通行困難な箇所を確認した。

 

水ヶ塚公園駐車場の車は、12時頃10数台程度。このコースは今夏、立入可能なので多くの来訪者が利用している。パトロール中に来訪者7人に出会った。キノコ採りの2人連れ2組。犬をつれた男性が1人。高齢の二人連れハイカー1組。キノコ採りの来訪者が「今年は不作」と話していた。

 

 

歩道

 

今回確認した従来からの登山歩道の通過困難箇所は下図の通り。数字を振った箇所が通行する上で、補修が必要。

 

20201014map_gt

図 須山口登山歩道1.5合目までの通過困難箇所。青色の線は従来の登山歩道。赤色の線は複線化した踏み跡。赤丸は通過困難場所

 

Image010

(1)段差

 

Img_20200728_121915_20201101114701

(1)段差 2020年7月

 

Image013   

(2)樹木根露出(下) 左側が複線化

 

Image014

(2) 樹木根露出(上) 侵食で大きな根が露出

 

Image015

(3)歩道を塞ぐ伐採木

 

Dsc_0061

樹木根の露出(大規模トレイルラン・レース通過の歩道肩崩壊)

 

Image020

(4)段差(下)

 

Img_20190813_090241

(4) 段差(下) 2019年8月

 

Image021

(4)段差(上)

 

Image023

(5) 倒木

 

Image025

(6)樹木根露出

 

Dsc_0069

 侵食段差

 

Image030

(7)樹木根の露出

 

Image031

(8) 樹木根露出、段差(下)

 

Image032

(8)樹木根露出、段差(上)

 

Image034

(9) 倒木

 

Image035

(10)段差、樹木根(下)

 

Image003

(10) 段差、樹木根(下) 2013年4月

 

Image036

(10) 段差、樹木根(上)

 

Image041

 (11) 倒木

 

これらの通過困難箇所の中で、「(2) 樹木根露出」、「(8) 樹木根露出、段差」、「(10) 段差、樹木根」の箇所は段差が大きく侵食が深い。雨水の流下や溶岩流の境界が影響しているのだろう。修復作業に労力が必要だ。ただ、周辺に大小の岩石があるので、修復に利用できる。また、この歩道では、毎年、宝永第三火口からゴンバ沢経由で砂礫の自然流下が起きており、あたかも侵食段差を誰かが補修したように歩道表層を平滑化している。もし、この自然流下する砂礫を、段差箇所へ誘導できれば、自然による部分的な修復も可能かもしれない。

 

Img_20201014_133135

自然林の入口近くまで到達する砂礫

 

Image039

須山口登山歩道1.5合目近く。運搬された砂礫で平滑化

 

 

動植物

 

水が塚公園からD/Eハイキングコースへの入口付近にあるミズナラの枝が枯れている。ナラ枯れの可能性がある。

今回のパトロール中は、ニホンジカの目撃はなく、鳴き声もきかなかったが、登山歩道に入ってしばらくウラジロモミの植林地をぬける間で、ニホンジカの足跡がみられた。また、近年は、ニホンジカの食害や一斉枯死により林床から消失していたスズタケの新たな実生が数箇所で見られた。ササの実生の成長には時間がかかると言われているが、林床の変化を見守りたい。

 

Img_20201014_130551

登山歩道入口のミズナラ、枝枯れ

 

Img_20201014_131907

ウラジロモミ人工林内の登山歩道。ニホンジカの足跡

 

Dsc_0089

スズタケの実生

 

 

ゴミ回収 5個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 1 その他 1
3.プラ 2 菓子容器 2
6.鉄 2 2

 

 

 

| | コメント (0)

環境パトロール (2020-06) 自然休養林(3)

日時 2020年(令和2年)9月9日(水) 9:00 - 17:30
区域 富士山自然休養林K、D/H/F/Eコース
天候 晴れ、曇り、雨
山頂 (9時) 気温 5.6℃、湿度 100%、652.9hPa
河口湖 (9時)上空3km SW, 9m/s

 

水ヶ塚公園を起点として、西隣の腰切塚(富士山自然休養林Kコース)と須山口登山歩道の1.5合目、御殿庭下、御殿庭入り口、三ツ辻、幕岩上、須山口下山歩道1.5合目、南山林道経由、水ヶ塚公園(富士山自然休養林D、H、F、Eコース)を環境パトロールした。Hコースは今夏、立入禁止となっている(管理者の了承済)。

 

水ヶ塚公園駐車場の車は、8時頃15台程度で、10時過ぎには、貸切バス5台を含む多くの駐車があった。

 

腰切塚Kコースでは来訪者に出会わなかったが、御殿庭下までに13人に出会った。二人連れのハイカー4組。男性の単独者が5人で、一人は水ヶ塚から山頂往復、一人はトレラン姿で「上までパトロール」と話していた。若い女性二人組は、「宝永火口縁まで登った。10人ぐらいと出会った」と話していた。年配の男性来訪者が、登山歩道からかなり外れて林内を歩いていたので声がけし、注意をお願いした。

 

 

地形、自然侵食

 

侵食の影響がみられたのは、a. 腰切塚。b. 須山口登山歩道で自然林に入ってから、1.5合目までの区間。c. 2合目から御殿庭下の区間。d. 御殿庭入口周辺。

 

Img_20200909_100935

a. 腰切塚のKコース、丸太階段下の侵食

 

Img_20200909_123550

b. 本来の須山口登山歩道は侵食が進む

 

Img_20200909_142615

c. 須山口登山歩道2合目から御殿庭下

 

Img_20200909_151021

d. 御殿庭入口周辺

 

Img_20200909_164820

e. 南山林道周辺の林床植生が火山礫に埋もれる

 

 

歩道と植生

 

腰切塚のKコースでは、丸太階段周辺が侵食し、階段がハードル状になって歩きづらく、階段の脇が複線化している箇所が多い。また、歩道脇や林内に枯損木がみらた。

 

Img_20200909_092521

ハードル化し歩きづらい木段脇の複線化

 

Img_20200909_092940

歩道脇の危険な枯損木

 

須山口登山歩道の1.5合目までの区間では、侵食により本来の登山歩道が通過困難になり、登山歩道周辺部や見通しが効く林内に数多くの踏み跡が生じ複線化している。今回のパトロールでは、本来の登山歩道を可能な限りトレースした。従来は侵食で段差ができ通行できなかった箇所が、さらなる侵食や砂礫の堆積で段差が減り、歩けるようになっていた。一方、登山歩道が水ミチとなり1m以上の段差に侵食している箇所が数箇所あり、通過に手間取った。結果的には、自然林の入口から、1.5合目目の先約200mところまで、本来の登山歩道を歩くことができた。

 

Img_20200909_122838

1mを超える段差箇所も段差が減り通行可能

 

Img_20200909_124140

本来の登山歩道を歩く。右側には幾筋もの踏み跡複線化

 

Img_20200909_124419

本来の登山歩道。樹木根が露出し歩きづらい

 

Img_20200909_124822

段差箇所。近くの小岩を移動すれば通過可能

 

須山口2合目から御殿庭下では、侵食によって歩道が水ミチ化し、石ころが多く歩きづらく、歩道外の植生部に踏み込む形の複線化がめだつ。場所によっては直線的(ショートカット的)な複線化も多い。

 

Img_20200909_142752

右側を避け、植生部を通過

 

Img_20200909_143339

直線的な複線化

 

こうした洗掘と堆積を繰り返してきた須山口登山歩道の侵食状況から、過去数十年以上、侵食されながらも通行できた本来の登山歩道は、補修が追いつけば、利用できそうだ。

 

御殿庭下から御殿庭入口までの区間(立ち入り禁止区間)では、歩道脇にコケ類や地衣類が生育し、庭園風景観がみられる。ここは、来訪者が歩道外へ踏み出さないよう保全対策が必須。この区間では、枯損木による掛かり木が複数見られる。

 

Img_20200909_145340

歩道脇にコケ類や地衣類の庭園風景観

 

Img_20200909_150326

枯損木の掛かり木

 

御殿庭入口から、三ツ辻・幕岩上までの区間(立入禁止区間)では、歩道の複線化とニホンジカによる食害が見られた。

 

Img_20200909_154208

ミヤマヤナギの枯れ。ニホンジカの食害

 

Img_20200909_155344

カラマツ林の林床に多く見られた歩道複線化

 

幕岩上から須山口下山歩道1.5合目までの世界文化遺産登録区間は、歩道の拡幅、複線化、植生損傷が進んでいる。

 

Img_20200909_161413

世界遺産の登山道、拡幅、複線化、植生損傷進む

 

Img_20200909_161834

同、左側が本来の登山道、2013年の大規模トレイルランレース利用後、直線的複線化

 

南山林道から水ヶ塚公園では、林道上に大きな落枝が多い。水ヶ塚近く、ミズナラの枝に葉が見えない。ナラ枯れか。

 

Img_20200909_165836

南山林道には大きな落枝が多い。ヘルメットが必要

 

Img_20200909_172851

水ヶ塚公園近くのミズナラ。この季節に葉が落ちている

 

水ヶ塚公園から腰切塚へ登る入り口付近には、以前フジアザミの大群落が見られた。最近は、10数株程度に減少している。

 

Img_20200909_102053

現在少数のフジアザミが観察できる

 

P1080401

2008年フジアザミの大群生。白い紙袋は種の採種用か

 

 

外来(移入)植物

 

来訪者が多い水ヶ塚公園西隣の腰切塚では、踏み固められた各所で外来植物のオオバコ類をみた。クロカンコース脇で外来植物のセイヨウウツボグサを確認した。

 

Img_20200909_095208

Kコース、腰切塚お鉢めぐり道のオオバコ類の群生

 

Img_20200909_101835

Kコース入口近くのオオバコ類の群生

 

 

施設、設備

 

今夏、富士山登山道やアクセス道路の立入禁止にともない、多くの種類の禁止や注意案内が表示されている。水ヶ塚公園、御殿庭下、須山口下山歩道幕岩分岐に富士山自然休養林保護管理協議会による「立ち入り禁止区域の案内」、「立ち入り禁止の表示」や「来訪者への利用案内」が掲示されていた。幕岩上に「熊出没注意」が表示されていたが、これは西臼塚などで見られる表示とは別様式だった。

 

Img_20200909_102113

Kコース、腰切塚入口の「立入禁止案内」

 

Img_20200909_143952

御殿庭下・ガラン沢分岐の「来訪者への利用案内」

 

Img_20200909_144441

御殿庭下、宝永火口方面の「立入禁止」表示

 

Img_20200909_144338

同、宝永火口方面のテーブが切れ、ビニール紐で補修

 

Img_20200909_144313

御殿庭下、御殿庭入口方面には「立入禁止」表示なし

 

Img_20200909_160641_20201031120901

幕岩上、「熊出没注意」

 

雨が多い富士山南麓では、歩道に設置された木段の前後が侵食し、丸太がハードルのように通行の障害となり、来訪者は木段の脇を歩いて、歩道の拡幅・複線化を招きやすい。腰切塚のKコース歩道では、丸太を二本重ねた木段が使われハードル化している箇所が多い。北側の歩道では、上の丸太を外してハードル化を防止しているようだ。丸太と立杭を長いボルトで締め付けているが、山側にボルトが突き出ている箇所があり、来訪者の安全を損ねる可能性がある。

Img_20200909_092244

Kコース南側の木段。ボルトの突出

 

Img_20200909_101046

Kコース北側の木段。上の丸太を外したのかもしれない

 

 腰切塚展望台の手すりに近づけないよう、ロープが張られていた。下からみると、アスレチック・コースで見られるように丸太を伝って上がれるように意図したものらしい。上の開口部が広くなっており、小さな子どもには落下の恐れがあり、ロープが付けられたのかもしれない。立入を禁止されているハイキング・コースの「立入禁止案内」のように、注意喚起の案内板をつけてほしい。

 

Img_20200909_093723

腰切塚頂上の展望台、注意喚起の案内がほしい

 

Img_20200909_094040

同、下から見た展望台の開口部

 

昨年、水ヶ塚公園から腰切り塚へ登る入口付近にクロスカントリーコースが造成された。コースの路面に、ランナーへの衝撃を軽減されるため、ウッドチップが敷かれている。年間降雨量3,500mmを超える富士山南麓の多雨地帯で、側火山腰切塚の斜面に作られたコースでは、まとまった降雨のたびに侵食がおき、ウッドチッブ流れている。

 今年度からコース脇に丸太が設置され、ウッドチップが周辺部へ広がりにくくなった。しかし、まとまった雨水でウッドチッブがコース外へ溢れだしている。溢れ出たウッドチップが植生部分に達した箇所が散見される。コース内のウッドチップが減ると新たに追加され、コースからの流出、追加が繰り返されているようだ。

 ウッドチップの敷設は、畑のマルチコーティングなど農作業でよく利用され、土壌が富栄養化状態になる。現状のままでは、クロスカントリーコース周辺部の自然植生を結果的に富栄養化させている。クロスカントリーコースの周辺には、もともと、火山荒原のような低栄養の砂地に生息するフジアザミが群生していた。ウッドチップ敷設の影響を注視したい。

 

Img_20200909_091424

クロスカントリー・コースの侵食状況

 

Img_20200909_091342

同、敷設したウッドチップの流出状況

 

Img_20200909_101413

Kコース歩道交差地点でのウッドチッブ流出

 

Img_20200909_101758

(Kコースの歩道や周辺植生へ広がったウッドチッブ)

 

 

ゴミ回収 18個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

2.布 2 タオル 1
3.プラ 9 菓子容器 6 破片 2 その他 1
5.ビニール 5 1 4
7.ガラス 2 破片 2

 

 

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧