2011年6月19日 (日)

富良野の樹海

富士山でおなじみの針広混交林。北海道の針広混交林を見たくなって富良野の樹海を訪ねた。

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樹海峠から見た北方針広混交林。針葉樹では、トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツ、広葉樹ではダケカンバ、ウダイカンバ、シナ類、ミズナラ、ハリギリ、ヤチダモなどの天然林。天然林とはいっても、人が手助けした天然林だ。

  

麓郷森林資料館
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建物は1927年に建てられた東大北海道演習林旧麓郷作業所を復元したもの。

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演習林で採れた実物の在来種材鑑。

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大きなウダイカンバ(マカンバ)

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演習林では、生物多様性の維持や森林生態系の保全に配慮した林分施業法に基づく天然林施業を行っている。そのためには高密度路網がかかせない。

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富士山のトウヒと同じように、エゾマツは、地表での更新木はみられず、倒木更新や根株更新による天然更新が主だ。

    

樹木園
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苗木の生産は特に難しいエゾマツがトドマツと並んで育てられている。

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エゾマツの1年生苗。

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日本各地のブナの比較表示があった。葉の大きさに注目。南、太平洋側は小さく厚い。北、日本海側ほど薄く大きい傾向があるようだ。

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確かに北海道のブナの葉は大きい。展示はされていなかったが、富士山南麓のブナの葉は小さく厚い

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カラマツのクローン林には猛禽類と思われる古い巣があった。

北海道の北方針広混交林を見ていると、富士山の針広混交林(ウラジロモミ、トウヒ、ダケカンバ、ウダイカンバ、ミズナラ、シナノキ、ブナなど)との繋がりと人との関わりを感じた。

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2011年4月25日 (月)

平成23年度富士山3776自然林復元大作戦

4/24(日)富士市大渕富士山国有林で行われた「富士山3776自然林復元大作戦(静岡県自然保護課主催)」に参加した。昨年の雹交じりの悪天とは打って変わって、晴天の富士山麓で汗をながした。

この自然林復元は、ヒノキ植栽地が台風による風倒で全滅したあとに、自生種による自然林回復を目指している。

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昨日の雨による延期にもかかわらず60名を超えるボランティアが参加。2300本を上回る苗が植えられた。

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この場所でのボランティアによる自然林復元が始まって5年が経過。自生種1万5千本が植えられたが、なかなか森にならない。

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日本中の森でみられるように、ここ富士山でもニホンジカの食害によって森の再生が難しくなっている。苗木を植えても植えても、シカに枝葉を食べられ枯れてしまう。苗木が小さいと梢端を食べられ、成長しない。

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中には、このブナのように食害にあわずに済んだものもある。たいてい、ノイバラやススキに囲まれて、シカが侵入しにくい場所。

今年の富士山3776自然林復元大作戦では、今までの経験から、シカがとどかない背の高い、ミズナラやブナを植えた。

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4mもあるミズナラの大苗

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森林管理署が準備くださった2mクラスのブナ大苗

また、通常サイズのケヤキやヒメシャラ、イロハモミジ、ヤマボウシなどの苗木は、ススキの中やノイバラの近くに植えて、シカが苗木に近寄りにくいよう工夫した。

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通常サイズの苗木をススキの中に植栽。

富士山3776自然林復元大作戦を指導くださっているNPO法人富士山自然の森づくり理事長の仁藤さんのお話(森のセミナー)も聴けた。

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「標高1100mの植栽地は、奥山であり、その本来の姿に戻そう」
そのために、下記のことを考えながら森づくりをしようというお話が印象に残った。
①遺伝子の尊重
富士山由来のブナを植える(以外のものは植えない)。
②生態系の維持
園芸種、外来種は植えずに、自然による森づくりを手伝う。
③種の多様性
準絶滅危惧種のサンショウバラなどが自生し、ニホンジカもふくめた生き物たちと共存できる森(特定の種が多すぎても、いなくても森は作れない)

この植栽地での苗木植えは今回で終了し、自然の回復が注意ぶかく見守られる。なお、5/28日にニホンジカ食害対策のボランティア活動が行われる予定。

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2010年4月24日 (土)

平成22年度富士山3776自然林復元大作戦

4/24(土)富士市大渕富士山国有林で開催された静岡県自然保護課主催の「富士山3776自然林復元大作戦」に参加した。

この自然林復元は、ヒノキ植林地が台風による風倒で全滅したあと、ヒノキ植樹の復旧に変えて、広葉樹へ改植する試み。

 

P1120386 立ち寄った水ヶ塚公園は、うっすらと雪が積もっていた。


  

Imgp8049 あいにくの天気にも関わらず、70人を上まわるボランティアが、静岡県や森林管理署の皆さんとヒメシャラ、ミズナラなど15種の広葉樹植栽に取り組んだ。雹(ひょう)、霰(あられ)、雪の寒空・悪天にもめげず、大勢のボランティアが熱い気持ちで、午前、午後あわせて2,200本植栽した。

 

Imgp8041 今年も技術指導はNPO法人富士山自然の森づくり。同NPOの中島さんがパッチ式植栽を解説。

 

Img1 <バッチ式植栽とは>(左図をクリックし拡大ください)

今年はヒメシャラやミズナラを中心部に植えた。(例年ならブナが真ん中)。ブナの苗は、本来の富士山自生種であることを確認をするため、今回は植えないそうだ。また、苗木へ竹支柱を立てかけるとき、紐で結ばなくなった。支柱は風倒対策。紐で結ばないのは、寒い中での作業効率化がねらい。

 

Imgp8046 こんな感じで一本が植栽され、15本で1パッチが形成される。

植栽樹種は、ミズナラ、ケヤキ、ヤマグリ、ヒメシャラ、ヤマボウシ、イロハモミジ、カツラ、キハダ、オオモミジ、イタヤカエデ、マユミ、ウリハダカエデ、ミズキ、コブシ、カエデ







Imgp8051 数年前に植えた苗木は、ニホンジカによって大きな被害をうけている。今回の植栽木をニホンジカの食害からまもるため、平成22年度富士山3776自然林復元大作戦(シカ食害対策)が5/22(土)に開催される。

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2009年11月 7日 (土)

森づくり研修会

11月7日(土)に開催された富士山国有林森づくり連絡協議会の研修会・現地意見交換会に参加した。

 

Imgp7047 協議会会長の仁藤さんが開会の挨拶。生物多様性の観点から「ニホンジカの食害対応」と「富士山固有種による自然林回復」を指摘された。


   

現地研修
Imgp7067 Imgp7073 富士山ナショナルトラストの皆さんは、周囲を防麓柵で囲んだ協定林にフジブナを中心に育林されていた。


Imgp7101 Imgp7089 分収造林を結んだ連合静岡の皆さんの森では15年生のヒノキが大きく成長していた。また、ブナもよく成長している。


  

意見交換会
午後は、グリーンキャンプ場の施設で「シカ被害状況及び対策報告と検討会」が開催された。十を上回る参加団体が報告。各団体の真摯な取り組みを伺うにつけ、増え続けるニホンジカに対して、森林生態系を保全する観点から個体数管理の時期ではという気がした。

Imgp7111 しめくくりとして、永井静岡森林管理署署長から来年の総会に向け、富士山国有林森づくりの考え方を纏めているとのお話があった。

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2009年5月30日 (土)

富士山国有林森づくり

5月30日(土)に富士市大淵、富士山国有林202林班で開催された富士山国有林森づくり連絡協議会のシカ被害対策検討会に参加。昨年11月に開催された共同事業に続くもの。

Imgp4496 開会の挨拶で、連絡協議会の仁藤浪会長は、ニホンジカ食害の影響の大きさにふれ、「植えても、植えても鹿の数にはかなわない。次の10年はやり方を変える」と指摘された。

Imgp4507 静岡森林管理署の猪股森林ふれあい係長から、麻テープ幹巻きによるブナ大苗への対策を親切ていねいに指導いただいた。

 

Imgp4510 4月に開催された平成21年度富士山3776自然林復元大作戦(植樹活動)では、ニホンジカの食害対応として初めて、大苗の植栽が行われた。2mを越える大苗では、梢端部へシカの口が届かず、食害対策として効果があるといわれている。ただし、大苗は、根系の発達が難しいそうだ。

Imgp4514 ブナの大苗の周りにパッチ状に植えられた1mに満たない広葉樹は、残念なことに、1月の間に殆んど梢端部を折られている。

 

Imgp4525 Imgp4528 今回、食害対策としてミズナラやマユミに、地際から1mほど麻テープで幹巻きをし、その上部には、昨年試行した麻テープのホチキス留めにしてみた。幹の保護と、上部の枝葉にストレスをかけずに保護することとを狙っている。今後モニタリングで効果を確認したい。



Imgp4544 閉会の挨拶で、永井静岡森林管理署長から、ニホンジカの食害対策には、ニホンジカの個体数管理が必要とのお話があった。また、連絡協議会会長の仁藤さんが富士山自然林回復活動への多大な貢献で、「国民の森林づくり」推進功労者表彰を受賞されたとの紹介があった。

参加された各団体の皆さまや連絡会の事務局を担当されている森林管理署のみなさま、いつも準備指導いただいているNPO富士山自然の森つくりのみなさま、意見交換や指導ありがとうございました。




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2008年11月30日 (日)

自然林再生検討会 シカの食害対策

11月29日(土)に開催された富士山国有林森づくり連絡協議会のシカ被害対策検討会に参加。富士山南面の森では、自然林、人工林問わずニホンジカの食害対策が課題となっている。

Imgp3574 森林管理署では、麻テープの幹巻きを推奨している。コスト面では、有利だ。

 


Imgp3576 植栽木が小さい場合、麻テープの長辺をホチキスで縫合する方法も紹介された。

 


Imgp3579 茅による植栽木の保護も試みられている。カエデがススキにくるまれている。ニホンジカの食性調査では、ススキも餌として利用ケースが報告されているが、効果をみまもりたい。

Imgp3595 指導いただいたNPO富士山自然の森づくりの方と参加者とが、食害対策実習を通じ、熱心に質疑応答していた。

   

Imgp3598 夕刻、富士が少し顔をのぞかせた。(西南面)



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2008年11月 9日 (日)

自然林再生研修会・意見交換会

生憎の雨模様にもかかわらす11月8日(土)に開催された富士山国有林森づくり連絡協議会の研修会・意見交換会に参加した。

今回は森林管理署と協定をむすんでいる3森林整備団体から、植栽履歴、課題点、今後の復旧方針が説明され、意見交換がおこなわれた。

Imgp3301 富士市では、富士山自生種の大苗(15年生)の大苗を植え、現在30年生となった森を見学した。

 


Imgp3304 NPO法人富士山クラブは、保育作業の難しさやシカの食害を報告。

 



Imgp3311 柿田川・東富士の地下水を守る連絡会の協定林もシカの食害が多く、茅を利用した防護など工夫がされていた。

 


Imgp3319 今回もシカの食害対策について各団体の対応を学ぶことができた。大苗の植栽(1.5m以上)により、ニホンジカから苗木梢端部をまもる試みが注目された。しかしながら、大苗植栽には、根系未発達による風倒の危険性も指摘された。また、ニホンジカの食性に関する質問もみられた。

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2008年8月23日 (土)

平成20年度富士山3776自然林復元大作戦

日時 2008年8月23日(土) 9:00-12:30
場所  西臼塚西側の国有林(165林班) 10年前に富士山自生種の広葉樹植栽地

肌寒さを感じる小雨の中、夏の富士山3776自然林復元大作戦(下刈)に参加した。普通、真夏の下刈というと、長い柄の大鎌で苗木の周りの草を刈り払う光景を思い出す。

Imgp2524 今回の作業は茅原に入り込んで以下の作業をおこなった。これは、年々広がるニホンジカの食害への対応、富士山での貴重な自然林回復の経験によるものだ。

①植栽木に絡みついたつる切り

②自生種の発見と目印の竹さし
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①と②の作業は、通常の下刈りでもおこなわれる。今回は草の刈り払いがなくなり、ニホンジカの樹皮剥ぎから植栽木を護るために、

③植栽木への麻テープ巻きImgp2529
プラスチックの鹿よけシェルターに比べて低コストと聞いた。なにより自然の素材がよい。効果をモニターしていこう。









Imgp2540NPO法人富士山自然森づくりの仁藤理事長の「森のセミナー」
背景は仁藤さんたちが、風倒木地を10年の歳月に手塩かけて森づくりしてきたところ。林道をはさんだ今回の作業地(冒頭の写真)と比べると違いが明白。台風による風倒被害跡地(国有林)が市民に開かれことは意義深い。今年も多くのことを学ぶことができた。

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2008年6月30日 (月)

自然林再生勉強会

6月28日(土)に開催された富士山国有林森づくり連絡協議会の平成20年度自然林再生勉強会に参加した。

森林管理署と協定を結んでいる二つの森林整備団体から、植栽履歴、課題点、今後の復旧方針などが報告され、熱心な質疑応答があった。

Imgp0018 NPO法人ドングリの会・福島さんの説明

   

Imgp0050 静岡県自然保護室・森下さんの説明

   

両協定地とも8~9年間、植栽後の補植や下刈りなどの作業が継続的に行われているが、自然林がなかなか回復していない。両協定地ともニホンジカの食害が大きく影響しているように思えた。ニホンジカの個体数管理が早急に検討される時期ではないだろか。

Imgp0053 森林管理署の永井署長から、世界遺産保全緊急対策事業の説明があった。森林景観回復措置に力をいれ、文化遺産としても保全していくとのことだった。

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2008年4月27日 (日)

平成20年度富士山自然林復元大作戦

P1110063 4月26日(土)にフジザクラの咲く富士山南麓国有林202林班(標高約1000m)で開催された本年度の富士山自然林復元大作戦に参加。静岡県と静岡森林管理署が主催し、NPO富士山自然の森づくりの皆さまに指導いただき、約120名のボランティアが自然の森づくりに気持ちのいい汗をながした。  

1996年(平成8年)9月の台風17号による風倒被害で、202林班のヒノキ植樹地はほぼ全滅。復旧方法としてヒノキの植樹がなされたが、ニホンジカの食害などでうまくいかず、昨年から広葉樹へ改植がすすめられている。

  

P1110068 NPO法人富士山自然の森づくりが進めているパッチ方式を採用し、ブナを中心に1パッチ15本の広葉樹を植栽している。今年は、富士山自生種のブナ、ミズナラ、ヒメシャラなど15種3000本で200パッチが植えられた。昨年は、1パッチあたり3本のブナであったが、今年は1本に減った。埋土種子のキハダが新たに植えられ、ヤマボウシも大幅に増やされた。

    

P1110072 お昼休みに、富士山国有林森づくり連絡協議会の仁藤会長が森のセミナーで話された。この植樹地では、獣害から植樹を守るため下刈りは行わないそうだ。ススキやフジイバラがあったほうが、ニホンジカたちも動きにくい。富士山固有の自生種による森づくりも、生物多様性の観点から重要と指摘された。

富士山の自然林復元に興味のある方は、以下ご一読をお勧めします。

渡邊定元先生の「富士山自然の森づくり -理論と実践-」(2006, 日本森林技術協会)

中村華子さん(山の自然学クラブ) 「富士山南麓の広葉樹林再生のために最適な下刈り強度」(2007, 日本緑化工学会誌)

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