« 環境パトロール (2021-06) 自然休養林のハイキングコース I | トップページ | 静岡県は森林情報公開の先進県 その3 »

2021年8月27日 (金)

環境パトロール (2021-09) 自然休養林のハイキングコース E

日時 2021年(令和3年)8月24日(火)  8:30 - 15:30
区域 自然休養林Eコース(水ヶ塚公園・登1.5合、幕岩、御胎内)
天候 曇り/ 晴れ
山頂 (8時) 気温3.7℃、湿度 100%、649.1hPa
河口湖 (8時)上空3km W, 10m/s

 

 

富士山自然休養林ハイキングコースE(水ヶ塚公園から須山口登山歩道、幕岩、須山口下山歩道、御胎内を経て、水ヶ塚公園まで)を環境パトロールした。スカイライン富士宮側は8月17日から大雨被害による通行止め。

スタート時点での水ヶ塚公園の駐車場の車は約80台。終了時も同程度の駐車台数。検温の係の方に聞いた話では、「15時20分現在、本日は167名検温済」とのことだった。係の方へは富士山への来訪自粛要請は伝わっていなかった。パトロール中に会話した来訪者は5名(男女2名2組。単独女性1名)。

 

Kmg_20210824_082045

朝8時の水ヶ塚駐車場

 

Kmg_20210824_084134

同、検温ステーション

 

 

水ヶ塚上のEコース開始地点と腰切塚へのKコース入り口の標準標識には、静岡県の「緊急事態宣言による自然歩道をふくむ観光施設使用自粛」が案内されていた。水ヶ塚上には森林管理署の「A、Bコース立入禁止案内」も表示。

 

Kmg_20210824_084438

水ヶ塚上の標識につけられた利用自粛案内

 

Kmg_20210824_084508

森林管理署の「A、Bコース立入禁止案内」

 

 

富士登山オフィシャル・サイトには、8月23日づけで、富士山への来訪を自粛するようお願いが掲示されている。 また、富士山自然休養林のホームページでは、当面の間、ハイキングコースの利用を控えるよう、利用自粛が案内されていた。また、Aコース、Cコースの全面利用禁止が案内されている。

 

Hp

左:富士登山オフシャル・サイト 中と右: 富士山自然休養林のホームページ

 

 

 

地形・歩道

大雨の影響で歩道や階段部分に大きな侵食が見られた。昨年7月のEコース環境パトロールで報告した箇所を中心に、場所によっては、大きな侵食となって、通行や植生保全に影響があり、雨水経路を含む整備が必要と思われる。

 

水ヶ塚・須山口登山歩道1.5合(国有林保護林)

 

Kmg_20210824_091800

浅黄塚東部の歩道脇侵食

 

 

Kmg_20210824_093105

浅黄塚分岐・1.5合間登山歩道脇の侵食

 

Kmg_20210824_094127

 

Kmg_20210824_094240

 

Kmg_20210824_095604

 

Kmg_20210824_100140

この区間の、連続した登山歩道侵食の最上部

 

 

この区間の連続した侵食の最上部から、登山歩道がミズ道となり大雨のたびに登山歩道の侵食が深くなっている。この最上部の上側は、宝永第三火口からの流出砂礫の堆積地となっている。この堆積地を通過する雨水が侵食最上部へ集まっている。この集中を避けるために堆積地に複数の水切り(写真ポール方向)をつけ周辺植生部へ雨水を分散させたい。

 

Kmg_20210824_100220

連続した侵食の最上部から上手の登山歩道、ミズ道化

 

Kmg_20210824_100653

砂礫が堆積した登山歩道にポール方向に水切り設置

 

Kmg_20210824_100856

砂礫が堆積した登山歩道にポール方向に水切り設置

 

 

須山口登山歩道1.5合・須山口下山歩道1.5合間の水平道

 

Kmg_20210824_130050

水平歩道が涸れ沢を横切る地点での侵食

 

Kmg_20210824_130126

 

 

須山口下山歩道1.5合・幕岩下降点(世界遺産構成要素の須山口登山道区間)

大規模トレイルラン・レース(UTMF2013)時に、尾根上のうねった歩道を外れて直線的な踏み跡が明瞭になった。その後、来訪者はこの直線化した複線化部分を利用し、ミズ道となり侵食が進んでいる。

 

Kmg_20210824_130604

須山口下山歩道1.5合

 

Kmg_20210824_131720

右側に曲がっていた歩道が直線化しミズ道となる

 

Kmg_20210824_131758

右側に曲がっていた歩道が直線化しミズ道となる

 

Kmg_20210824_134604

崩落岸へ近づく直線化した踏み跡がミズ道となる

 

 

幕岩への下降路

幕岩への急な下降路は、昨年7月と同様に大雨による侵食が顕著。今年5月の環境パトロール時には、整備され歩きやすくなっていた。今回は、下りに不安を感じる状態になった。

 

Kmg_20210824_132047

ミズ道化した歩道の侵食、樹木根が露出

 

Kmg_20210824_132110

右側を避け左側の流失した木段部にも踏み跡

 

Kmg_20210824_132218

崩れやすい砂礫部分の侵食

 

Kmg_20210824_132430

同、例年の大雨後と同様に深く侵食

 

Kmg_20210824_132623

場所によっては危険を感じる下り

 

Kmg_20210824_132703

右側の立杭部分の土台が侵食でなくなり木段流出

 

 

幕岩・御胎内間の世界文化遺産の登山道

昨秋の環境パトロールで石を移動し歩きやすくなっていた下山歩道では、簡易的な水切りが数多く見られた。短い距離で植生部に水を逃している箇所は効果が見られる。一方、比較的長い距離に直線的に設置された簡易水切りは、雨水を集め、下流で下山道の侵食を大きくしている。

 

Kmg_20210824_135419

幕岩・御胎内間の世界文化遺産の登山道の水切り

 

Kmg_20210824_135746

同、短い距離で植生部分へ雨水を逃している

 

Kmg_20210824_140747

同、直線的に長い水切りが続く

 

Kmg_20210824_141255

同、集まった雨水で歩道が深く侵食

 

 

施設、標識

●水ヶ塚上の標準標識にくくりつけられた「自粛要請案内」は、取付け紐がゆるく、風で寄せられ読めなかったので縛り直した。また、水ヶ塚上の入り口に掲示されていた「クマ注意」の案内板は外れて土で汚れ読みにくくなっていた。

 

Kmg_20210824_151443

風で移動し読めない自粛要請案内

 

Kmg_20210824_151713

来訪者へ見えるように自粛要請案内を縛り直し

 

Img_20210824_151559_dro

外れて土で汚れ読めない「クマ出没注意」案内板

 

●Eコースの水ヶ塚上から須山口登山歩道1.5合目間では、毎回報告しているピンク色の私的マーキングはそのままだった。このビニールテープに誘導された踏み跡は、ミズ道化が進み、樹木根の露出・損傷がさらにひどくなっていた。

 

Kmg_20210824_092736

私的マーキングに誘導された踏み跡、樹木根損傷拡大

 

Kmg_20210824_093604

私的マーキングに誘導された踏み跡、樹木根損傷拡大

 

Kmg_20210824_094034

私的マーキングに誘導された踏み跡、樹木根損傷拡大

 

●幕岩には、KDDIと御殿場市の名前が入ったバーチャル・ガイドツアーの案内板があった。この案内板があるところは国立公園内であり、富士山自然休養林(国有林)内だが、環境省や森林管理署、富士山休養林保護管理協議会の名前はない。示された地図には多くの地点に同様な案内板が設置されている。管理者へ届け出ているのだろうか。

 

Kmg_20210824_132848

幕岩の「富士山バーチャルガイドツアー」案内板

 

●度々報告している、御胎内上の幕岩方向を示す標識は設置されていない。来訪者のため幕岩方向を示す標識が必要。

 

Kmg_20210824_142429

御胎内上、幕岩方面をしめす標識がほしい

 

●御胎内上から水ヶ塚公園にかけては、水ヶ塚方面を目指す場合にのみ見える、樹木の東側に(約2mの高さ)つけられた5cm x 7cm程度の私的マーキングが数m~十数m間隔で見られた。設置目的は分からない。

 

Kmg_20210824_145918

東側にのみ着けられたビニールテープの私的マーキング

 

Kmg_20210824_145515

樹幹の高さ2m、東側にのみ私的マーキング

 

Kmg_20210824_145628

内側テープをタッカーで固定し、外側に赤ガムテープ貼る

 

●須山口登山歩道1.5合、須山口下山歩道1.5合間の水平歩道に設置されているベンチは腐食してほぼ使えない。南山休憩所内にあったベンチはなくなり、二本の丸太が置いてあるが、座ると移動して危ない。

 

Kmg_20210824_125244

水平歩道の腐食がすすむベンチ

 

Img_20210824_121025_dro

水平歩道にある倒れたベンチ

 

Kmg_20210824_125518

 

Kmg_20210824_121910

南山休憩所内の不安定な丸太ベンチ

 

 

腰切塚山麓に作られたクロカン・コース

昨年と同様に斜面の傾斜方向に作られたコース内に水ミチができ、敷き詰められた大量のチップがコース外へ溢れ出し、植生の中まで集積していた。また、チップは腰切塚への歩道にも集積していた。さらに、一部は駐車場の公園の歩道にまで溢れ出していた。ウッドチップは土壌を酸性化する。また、チップに外来植物の種混入が懸念される。

毎年、斜面コースのチップが大量にコース外に流出し、周辺植生に堆積している。チップが流出したコースには、また、チップが補給敷設され、結果的に年々周辺植生に堆積が繰り返されている。周辺植生への影響を注視したい。

 

Kmg_20210824_152559

クロカン・コースのチップが溢れ植生部分へ

 

Kmg_20210824_152622

同拡大、大量のチップが流出。植生を覆う

 

Kmg_20210824_152636

同拡大、流出した大量のチップ

 

Kmg_20210824_153256

駐車場歩道までチップ流出

 

Kmg_20210824_153017

腰切塚への歩道交差部分から歩道へチップ流出

 

Kmg_20210824_152930

同歩道内のチップが周辺の植生へ広がる

 

 

 

植物

20210824map_p

背景は環境省植生図から自然林を抽出

 

●ミズナラの「ナラ枯れ」を3箇所で確認した(上図、薄茶色のマル印)。水ヶ塚上のハイキングコース入り口にある、昨年ナラ枯れのフラスを確認したミズナラは、部分的に枝が落ち、葉は疎らになった。下から見た限り実は見えない。登山歩道1.5合から南山休憩所間の水平歩道で、枯れたミズナラの大径木2本を見た。標高は約1,610m。一本は根本にフラスがあったのでナラ枯れだ。昨年度の休養林環境パトロールでナラ枯れのミズナラを多数確認している。今秋、ナラ枯れの影響でミズナラの結実が減少し、ブナの実の豊凶具合によっては、堅果を採食するツキノワグマなど動物生態に影響が出るかもしれない。

 

Kmg_20210824_084325

水ヶ塚上のミズナラ。枝が落ち葉も疎ら、実は見えない

 

Kmg_20210824_120353

水平歩道区間、枯れたミズナラの大径木

 

Kmg_20210824_120446

同ミズナラの根本。雨でフラスが流れている

 

Kmg_20210824_121308

水平歩道区間、枯れたミズナラの大径木

 

●移入植物のオオバコ類はEコースの随所で見られた(上図、赤色のマル印)。

 

Kmg_20210824_091354

浅黄塚東側自然林入り口、移入植物のオオバコ類

 

Kmg_20210824_124502

南山休憩所、移入植物のオオバコ類

 

●ミズキやリョウブにニホンジカの採食と思われる樹皮はぎが見られた(上図、黄色のマル印)。

 

Img_20210824_091155_dro

浅黄塚東側自然林入り口近く、ミズキの樹皮はぎ

 

Kmg_20210824_142101

御胎内、リョウブの樹皮はぎ

 

●林床植生が貧弱となり見通しが良い登山歩道1.5合周辺で、スズタケの実生を確認した(上図、緑色のマル印)。

 

Kmg_20210824_104750

登山歩道1.5合周辺、スズタケの実生

 

Kmg_20210824_113319

 

 

 

動物

登山歩道1.5合付近では、ニホンジカ、ニホンアナグマ、ハクビシンが記録されていた。4月末から8月末の4ヶ月間の記録で、大半はニホンジカの♀または幼獣だった。本年初夏に生まれた当歳子も記録されている。

 

Img_0203

ニホンアナグマのペア

 

Img_0218_20210915151101

尾が長いハクビシン

 

Img_0788

今年誕生したニホンジカとその母ジカ

 

Img_0927

8月に初めて記録されたニホンジカ♂

 

 

 

ゴミ回収 29個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

3.プラ 9 弁当 1 菓子容器 4 破片 4
5.ビニール 18 6 破片 12
6.鉄 2 その他 2

 

 

|

« 環境パトロール (2021-06) 自然休養林のハイキングコース I | トップページ | 静岡県は森林情報公開の先進県 その3 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。