合同環境パトロール (2021-02) 須山口登山歩道・黒塚
日時 | 2021年(令和3年)4月24日(土) 8:00 - 12:00 |
区域 | 須山口登山歩道(弁当場・フジバラ平・大調整池・黒塚) |
天候 | 晴れ |
山頂 | (8時) 気温-5.7℃、湿度 13%、643.5hPa |
河口湖 | (8時)上空3km ENE, 7m/s |
須山口登山歩道の弁当場から、沢沿いにフジバラ平、大調整池へ至り、御釜塚東側の谷侵食状況を見て黒塚を経て弁当場へ帰る、今年度最初の合同環境パトロールに参加した。同コースは、私達の「マウントフジ・トレイルラン植生保全環境調査」地で、2012年以来継続観察している。
新型コロナ感染症対策で、調査経験組と未経験組に別れ、未経験組は、土壌硬度の測定を体験した。
弁当場周辺に2組の来訪者がいた。環境パトロール中は、健脚の男性1名、野鳥撮影の男性1名に出会った。
合同環境パトロール参加者
ニホンジカ
黒塚・須山口登山歩道周辺では、毎冬、数多くのニホンジカの生息や食害が記録されている。今回はニホンジカの痕跡がはあまり目立たなかったが、送電線(東電田代幹線)下の伐採地では、ミツマタの枝先の採食が目立った。弁当場の近くでは、樹木の根際が尖ったものでくり抜かれていた。ニホンジカ角研ぎだろうか?
ミツマタの枝先採食、送電線下の伐採地
ニホンジカ角研ぎか、弁当場近く
外来植物
フジバラ平調整池周辺や大調整池周辺では、開花前の外来植物「ハルザキヤマガラシ」が数多くみられた。大調整池南東側の歩道周辺で開花した外来植物の「セイヨウタンポポ」が見られた。
外来種「ハルザキヤマガラシ」。大調整池東側
外来種と大型ゴミが多いフジバラ平調整池周辺
外来種「セイヨウタンポポ」。大調整池南東側
ナラ枯れ
フジバラ平北側では、比較的狭い区域にまとまってミズナラの「ナラ枯れ」が見られた(5本)。弁当場近くでもミズナラの「ナラ枯れ」が見られた(5本)
ミズナラの「ナラ枯れ」。根際にフラス(木くず)。フジバラ平北側
同、フジバラ平北側
同、弁当場近く
歩道
フジバラ平と大調整池間の須山口登山歩道や黒塚の急傾斜歩道は、2012年から2016年にかけて毎年大規模トレイルラン・レース(UTMF)にコース利用され、750名~1800名のランナーの連続踏圧によって大きく荒廃した。それらの歩道は、保全作業にも関わらず、その後も年々侵食が加速している。
エバーグリーン道路から弁当場へのアクセス道路は昨年、通行止めになるほど荒廃した。今回、この区間は重機を使って補修、整備された。弁当場に水汲みに来たり、車をとめて散策を楽しむ来訪者にはありがたい。また、弁当場から沢沿いの登山歩道は補修中のようだ。
整備が行われた弁当場へのアクセス路
整備中の弁当場からの沢沿い須山口登山歩道
送電線(東電田代幹線)下の伐採地を通る登山歩道は、斜面の侵食、土砂ずれ落ちが進んだ。また、2019年に従来の登山歩道の斜面上部につけられた迂回路は進入口が分かりづらく、斜面下の沢底にピンク色のテープが付けられ、迂回の踏み跡ができていた。また、ここから西北西約180mの地点で登山歩道を外れ斜面を登るようテープ誘導されていた。これらのテープには、管理者名は表示されていない。斜面の傾斜線方向に付けられた踏み跡は、ミズ道になり更に侵食の引き金となる恐れがある。
大規模トレランレース(UTMF)に繰り返し使用された歩道周辺では、レースによってエグられた箇所の侵食が進み、歩道が複線化したり拡幅し、樹木の根が露出している。場所によっては、樹木の倒壊や斜面の流出につながる恐れがある。黒塚ほどは急斜面でない、弁当場からフジバラ平を経由し、大調整池に至る歩道でも侵食が進み、樹木の根が露出し、周辺部の裸地化が進んでいる箇所もある。
大規模トレイルラン・レースの過度の踏みつけや侵食によって裸地化が進むフジバラ平近くの定点観測地点「小沢」では、歩道中央部の土壌硬度が3.0~3.5kgfcm-2(指標が15~16mm)程度と比較的大きな(硬い)値を示し、過去の2016年の0.58kgfcm-2、2017年の1.12kgfcm-2とは異なる状態だった。これは、ここしばらく晴天が続き、歩道の表層が乾燥していたことが影響していると思われる(歩道周辺の植生部は1.4kgfcm-2と比較的柔らかい)。
また、歩道沿いにはシカの樹皮はぎによる枯損木が多く、歩道に倒れている箇所があった。涸れ沢の岸が崩落し、落ちた樹木が倒れて歩道を塞いでいる箇所もあった。
歩道侵食、樹木根の露出、損傷、黒塚北東
UTMF通過後の倒れた樹木、黒塚北東
UTMF後更に荒廃した斜面、黒塚北東
同、2016年9月UTMF雨天決行後
裸地化が進む「小沢」。土壌硬度で計測を実習。黒塚北東
同、2016年9月UTMF雨天決行後
UTMF後歩道が荒廃し歩道拡幅、フジバラ平北
UTMF後樹木根が露出、損傷、御釜塚東
侵食、根の露出、右側は危険な崖御釜塚東
同、2016年9月UTMF雨天決行スリップ多発
根本が崩落し歩道にかかる倒木、大調整池北東
歩道にかかる倒れた枯損木、黒塚東
階段などの施設
御釜塚北東の崩壊が進む崖上の迂回路や黒塚にUTMF実行委員会が現状復旧として設置した丸太階段は、補修のたびに打ち込む立杭が斜面の土壌強度を弱める上、樹木を未加工のまま使用し、腐食しやすく、工法、丸太材ともに、地形・地質・気象など環境条件に合わず、数年のうちに不安定で危険になるものがある。
2019年9月にUTMF実行委員会は黒塚の歩道で2016年の最終レース後3度目の修復作業を行った。黒塚の丸太階段は部分的に補強された。黒塚北側斜面の丸太階段は現在でも安定しているものが多いが、南側斜面では、補修されず腐食したり、丸太階段下の法面が侵食し、不安定な階段が見られた。丸太材は自然木のままで防水・腐食処理はない。過去7年間観察し、レース実行委員会へ伝えてきたように、自然木のままでは数年で腐食し、不安定で危険な階段になることが危惧される。実際、黒塚南側斜面に設置された丸太階段に体重をかけると丸太が折れたり、丸太が移動し転びそうになった。
侵食が進む丸太階段周辺、黒塚北斜面
腐食と法面侵食が進み折れた丸太階段、黒塚南斜面
腐食で移動し滑りやすい丸太階段、黒塚南鉄塔脇
対照的に大調整池北側、旧ゴルフ場横に2012年第一回の大規模トレイルラン・レース開催以前から設置された丸太階段は、丸太材に防腐処理がされ、立杭にも防腐処理された金属が使われている。年間雨量が3,000mmを超える富士山南麓では、気象条件に対して耐久性がある施工が必要だ。
防腐処理された丸太階段、旧ゴルフ場脇
御釜塚北東の崩落が進む崖に設置された迂回路の丸太階段(2014年設置)では、立杭の増加、丸太材の腐食、丸太下の法面侵食が進み、来訪者は歩き辛い丸太階段を避けて階段脇を通り、歩道複線化が進んだ。
立杭の増加、法面侵食、御釜塚東側崩壊崖迂回路
2018年に登山歩道保存会やボランティアによって、設置された大調整池下流の丸太階段や侵食止めは2020年には流出していたが、さらに侵食がすすんだ。「自然環境が厳しい富士山南麓側火山地帯では、歩道や周辺環境の保全管理は一筋縄ではいかない」ということを教えられる。
大調整池直下。2018年。迂回路としてつくられた丸太階段
同、侵食が進み丸太階段が流出した大調整池直下
御釜塚東側の崩壊谷
崩壊が進む崖直上の歩道は2012年にUTMFで使われ、2013年には通過が危険となり、急場のシカ道を使った迂回路を使われた。2014年に新たに丸太階段の迂回路がつくられた。この崩壊が進む谷は、御釜塚の北東を鋭く侵食している。
崩壊が進む御釜塚北東の崖、対岸から
崩落した旧登山道
ゴミ回収 56個 (ゴミ収集記録調査票に対応)
3.プラ | 44 | 弁当 | 4 | 菓子容器 | 5 | 破片 | 35 |
4.発泡スチロール | 2 | 破片 | 2 | ||||
5.ビニール | 6 | 衣類 | 1 | 紐 | 5 | ||
6.鉄 | 4 | 飲料缶 | 2 | その他 | 2 |
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