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2021年4月28日 (水)

環境パトロール (2021-03) 自然休養林のハイキングコースD/E

日時 2021年(令和3年)4月24日(土) 13:00 - 16:00
区域 休養林のD/Eコース(水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合)
天候 晴れ
山頂 (13時) 気温-4.4℃、湿度 5%、643.1hPa
河口湖 (13時)上空3km N, 6m/s

 

 

富士山自然休養林D/Eコース(須山口登山歩道)を、水ヶ塚公園から須山口登山歩道1.5合目まで往復環境パトロールした。このコースは多くの来訪者が利用している。侵食が進み、歩行が困難な従来からの登山歩道周辺には、通過しづらい箇所を避けた、ピンク色テープの私的マーキングに誘導された踏み跡がある。

このピンクの私的マーキングは昨年秋に増えたが、誰が設置しているのか管理者名はない。水ヶ塚公園から須山口登山歩道1.5合目間の約半分は、国有林の「富士山生物群集保護林」を通過している。

ピンク色テープに誘導された踏み跡は、従来の登山歩道を外れて、「富士山生物群集保護林」内のスズタケが消失し見通しが効く林床の植生を損傷している。踏み跡は既に複線化している部分もある。また、踏み跡がミズ道化して新たな侵食による林床荒廃の恐れがある。

 

水ヶ塚公園駐車場の車は、12時頃60台程度。パトロール中に来訪者15人に出会った。単独の男性11人(内1人は実際に走っていた。1人は登頂者)、男女のペア2組。

 

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16時頃の水ヶ塚公園駐車場

 

 

従来からの須山口登山歩道

相変わらず、登山歩道の侵食が進んでいる。しかし、昨年11月に自然休養林Fコース(須山口下山歩道)にあった「石を並べた水切り」が、今回のパトロール・コースでも見られた。また、昨年10月に歩いた際に、段差が大きく歩きづらかった箇所は少しづつ歩きやすくなったと感じた。歩道の補修が行われているようだ。富士山自然休養林保護管理協議会の本格的な歩道整備というより、歩道や周辺植生の保全に関心が高い方の尊い志かもしれない。

 

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侵食で大きな根が露出、この地点は補修必要

 

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UTMF後に右側の路肩が崩れた歩道。奥の段差が減少

 

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同、土砂が流れたのか傾斜が緩くなり歩ける

 

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過去に保守され今も歩ける従来の登山歩道

 

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この段差も歩けたが、石を埋めるなど補修必要

 

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歩道上に石が並ぶ。歩道の水切りと来訪者の歩きやすさ

 

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須山口1.5合目にも同様な水切り

 

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水ヶ塚公園に近い人工林の斜面にも水切り

 

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老朽化が進む須山口1.5合目のベンチ

 

 

ピンク色テープに誘導された踏み跡

富士山自然休養林を通過する須山口登山歩道(D/Eハイキングコース)には、他の自然林ハイキングコースと同様に、富士山自然休養林保護管理協議会によって標準標識が設置されている。さらに須山口登山歩道保存会の標識も設置されている。しかしながら、浅黄塚への分岐から須山口1.5合目までの比較的長い600mの区間には、行き先を表示した標準標識は見当たらない。

ところがこの浅黄塚への分岐から須山口1.5合目までの区間には、管理者名や行き先が表示されないビニールテープのマーキングが多数見られる。この私的なマーキングは、歩道外へ踏み出し、ニホンジカの食害などによりスズタケが消失し、見通しが効く林床を直線的に通る踏み跡へ誘導している。これらビニールテープ・マーキングの多くは、2020年7月や9月の環境パトロール時には見られず、10月頃に設置されたようだ。

この区間は、トレイル・ランナーによる、タイムトライアル・レースが行われている。また、裾野市の「準高地トレーニング」のトレイルラン・コースにも選定されている。歩道外の保護林内に私的マーキングが設置され、通行誘導が行われているため、林内のいたるところで植生が踏み荒らされている。この踏み跡はミズ道となり新たな侵食が引き起こされる恐れがある。さらに、他の来訪者も、その踏み跡を利用してしまい、結果的に本来の登山歩道が保全されないまま放置される。

この区間は、国有林「富士山生物群集保護林」に指定されている。この保護林の設置目的は林野庁のホームページに以下のように示されている。

「富士山の山腹には、日本の低山帯から高山帯にわたる植生の垂直分布が模式的に存在し、太平洋気候区の典型的な森林として維持されている。低山帯には、ブナ、ミズナラ、カエデ類等の落葉広葉樹を主体とした天然林が成立し、亜高山帯には、カラマツ、イラモミ、ウラジロモミ、コメツガ、シラビソなどを主体とした天然林が成立している。また、丸尾と呼ばれる溶岩流上には、ヒノキ純林の特徴的な群落が形成され、スコリアの堆積地には、火山荒原草本群落が形成されている。このため、当該地域の代表的なこれらの群落を主体とする地域固有の生物群集を有する森林を保護・管理することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護、森林施業・管理技術の発展、学術の研究等に資するため設定する」

 

この保護林内の登山歩道について私達エコレンジャーは、過去何回も環境パトロールを実施した。登山歩道に通行困難な箇所があり、歩道外に幾筋もの踏み跡ができ、複線化し、植生損傷が見られ、来訪者の道迷いも報告されていることから、本来の歩道や周辺植生の保全対策を進めてもらいたいと重ねて要請してきた。

来訪者の道迷いを防ぎ、「富士山生物群集保護林」の設置目的に則した保全利用になるように、森林管理署や富士山自然休養林保護管理協議会は、本来の歩道を修復し、私的マーキング設置者を指導し、標準標識の設置をお願いしたい。

 

 

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①目立つビニールテープで登山歩道を外れ、林内に誘導

 

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②樹木の根が露出し踏みつけられ損傷。白い部分はニホンジカの食痕

 

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③左端の登山道を外れ、樹木根を著しく損傷し林内に誘導

 

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④樹木根の露出と損傷

 

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⑤樹木根の露出と侵食、ミズ道化

 

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⑥樹木根の露出と損傷、ミズ道化

 

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⑦樹木根の露出と損傷

 

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⑧樹木根の露出と損傷

 

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⑨樹木根の露出と損傷、ミズ道化

 

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⑩樹木根の露出と損傷、複線化

 

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⑪樹木根の露出と損傷

 

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⑫樹木根の露出と損傷

 

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⑬樹木根の露出と損傷

 

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⑭樹木根の露出と損傷、樹木根下の空洞に石積み

 

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⑮樹木根の露出と損傷

 

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⑯樹木根の露出と損傷

 

 

動植物

ニホンジカの目撃はなく、鳴き声もきかなかった。しかし、登山歩道に入ってウラジロモミの植林地から自然林にかけて、歩道脇の樹木根際にニホンジカの食痕と思われる痕跡が数多くみられた。

 

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橙色の丸は食痕確認地点、地理院地図、静岡県CS立体図、環境省植生図

 

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根際や根を噛じられた樹木が多く見られた

 

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歩道脇のシロカネソウ

 

 

ゴミ回収 15個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 1 タバコ吸い殻 1
3.プラ 3 菓子容器 3
5.ビニール 10 1 破片 8 その他 1
6.鉄 1 アルミ飲料缶 1

 

 

 

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2021年4月26日 (月)

合同環境パトロール (2021-02) 須山口登山歩道・黒塚

 

日時 2021年(令和3年)4月24日(土) 8:00 - 12:00
区域 須山口登山歩道(弁当場・フジバラ平・大調整池・黒塚)
天候 晴れ
山頂 (8時) 気温-5.7℃、湿度 13%、643.5hPa
河口湖 (8時)上空3km ENE, 7m/s

 

 

須山口登山歩道の弁当場から、沢沿いにフジバラ平、大調整池へ至り、御釜塚東側の谷侵食状況を見て黒塚を経て弁当場へ帰る、今年度最初の合同環境パトロールに参加した。同コースは、私達の「マウントフジ・トレイルラン植生保全環境調査」地で、2012年以来継続観察している。

新型コロナ感染症対策で、調査経験組と未経験組に別れ、未経験組は、土壌硬度の測定を体験した。

弁当場周辺に2組の来訪者がいた。環境パトロール中は、健脚の男性1名、野鳥撮影の男性1名に出会った。

 

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合同環境パトロール参加者

 

 

ニホンジカ

黒塚・須山口登山歩道周辺では、毎冬、数多くのニホンジカの生息や食害が記録されている。今回はニホンジカの痕跡がはあまり目立たなかったが、送電線(東電田代幹線)下の伐採地では、ミツマタの枝先の採食が目立った。弁当場の近くでは、樹木の根際が尖ったものでくり抜かれていた。ニホンジカ角研ぎだろうか?

 

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ミツマタの枝先採食、送電線下の伐採地

 

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ニホンジカ角研ぎか、弁当場近く

 

 

外来植物

フジバラ平調整池周辺や大調整池周辺では、開花前の外来植物「ハルザキヤマガラシ」が数多くみられた。大調整池南東側の歩道周辺で開花した外来植物の「セイヨウタンポポ」が見られた。

 

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外来種「ハルザキヤマガラシ」。大調整池東側

 

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外来種と大型ゴミが多いフジバラ平調整池周辺

 

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外来種「セイヨウタンポポ」。大調整池南東側

 

 

ナラ枯れ

フジバラ平北側では、比較的狭い区域にまとまってミズナラの「ナラ枯れ」が見られた(5本)。弁当場近くでもミズナラの「ナラ枯れ」が見られた(5本)

 

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ミズナラの「ナラ枯れ」。根際にフラス(木くず)。フジバラ平北側

 

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同、フジバラ平北側

 

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同、弁当場近く

 

 

 

歩道

フジバラ平と大調整池間の須山口登山歩道や黒塚の急傾斜歩道は、2012年から2016年にかけて毎年大規模トレイルラン・レース(UTMF)にコース利用され、750名~1800名のランナーの連続踏圧によって大きく荒廃した。それらの歩道は、保全作業にも関わらず、その後も年々侵食が加速している。

 

エバーグリーン道路から弁当場へのアクセス道路は昨年、通行止めになるほど荒廃した。今回、この区間は重機を使って補修、整備された。弁当場に水汲みに来たり、車をとめて散策を楽しむ来訪者にはありがたい。また、弁当場から沢沿いの登山歩道は補修中のようだ。

 

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整備が行われた弁当場へのアクセス路

 

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整備中の弁当場からの沢沿い須山口登山歩道

 

 

送電線(東電田代幹線)下の伐採地を通る登山歩道は、斜面の侵食、土砂ずれ落ちが進んだ。また、2019年に従来の登山歩道の斜面上部につけられた迂回路は進入口が分かりづらく、斜面下の沢底にピンク色のテープが付けられ、迂回の踏み跡ができていた。また、ここから西北西約180mの地点で登山歩道を外れ斜面を登るようテープ誘導されていた。これらのテープには、管理者名は表示されていない。斜面の傾斜線方向に付けられた踏み跡は、ミズ道になり更に侵食の引き金となる恐れがある。

 

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大規模トレランレース(UTMF)に繰り返し使用された歩道周辺では、レースによってエグられた箇所の侵食が進み、歩道が複線化したり拡幅し、樹木の根が露出している。場所によっては、樹木の倒壊や斜面の流出につながる恐れがある。黒塚ほどは急斜面でない、弁当場からフジバラ平を経由し、大調整池に至る歩道でも侵食が進み、樹木の根が露出し、周辺部の裸地化が進んでいる箇所もある。

大規模トレイルラン・レースの過度の踏みつけや侵食によって裸地化が進むフジバラ平近くの定点観測地点「小沢」では、歩道中央部の土壌硬度が3.0~3.5kgfcm-2(指標が15~16mm)程度と比較的大きな(硬い)値を示し、過去の2016年の0.58kgfcm-2、2017年の1.12kgfcm-2とは異なる状態だった。これは、ここしばらく晴天が続き、歩道の表層が乾燥していたことが影響していると思われる(歩道周辺の植生部は1.4kgfcm-2と比較的柔らかい)。

また、歩道沿いにはシカの樹皮はぎによる枯損木が多く、歩道に倒れている箇所があった。涸れ沢の岸が崩落し、落ちた樹木が倒れて歩道を塞いでいる箇所もあった。

 

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歩道侵食、樹木根の露出、損傷、黒塚北東

 

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UTMF通過後の倒れた樹木、黒塚北東

 

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UTMF後更に荒廃した斜面、黒塚北東

 

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同、2016年9月UTMF雨天決行後

 

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裸地化が進む「小沢」。土壌硬度で計測を実習。黒塚北東

 

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同、2016年9月UTMF雨天決行後

 

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UTMF後歩道が荒廃し歩道拡幅、フジバラ平北

 

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UTMF後樹木根が露出、損傷、御釜塚東

 

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侵食、根の露出、右側は危険な崖御釜塚東

 

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同、2016年9月UTMF雨天決行スリップ多発

 

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根本が崩落し歩道にかかる倒木、大調整池北東

 

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歩道にかかる倒れた枯損木、黒塚東

 

 

階段などの施設

御釜塚北東の崩壊が進む崖上の迂回路や黒塚にUTMF実行委員会が現状復旧として設置した丸太階段は、補修のたびに打ち込む立杭が斜面の土壌強度を弱める上、樹木を未加工のまま使用し、腐食しやすく、工法、丸太材ともに、地形・地質・気象など環境条件に合わず、数年のうちに不安定で危険になるものがある。

 

2019年9月にUTMF実行委員会は黒塚の歩道で2016年の最終レース後3度目の修復作業を行った。黒塚の丸太階段は部分的に補強された。黒塚北側斜面の丸太階段は現在でも安定しているものが多いが、南側斜面では、補修されず腐食したり、丸太階段下の法面が侵食し、不安定な階段が見られた。丸太材は自然木のままで防水・腐食処理はない。過去7年間観察し、レース実行委員会へ伝えてきたように、自然木のままでは数年で腐食し、不安定で危険な階段になることが危惧される。実際、黒塚南側斜面に設置された丸太階段に体重をかけると丸太が折れたり、丸太が移動し転びそうになった。

 

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侵食が進む丸太階段周辺、黒塚北斜面

 

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腐食と法面侵食が進み折れた丸太階段、黒塚南斜面

 

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腐食で移動し滑りやすい丸太階段、黒塚南鉄塔脇

 

 

対照的に大調整池北側、旧ゴルフ場横に2012年第一回の大規模トレイルラン・レース開催以前から設置された丸太階段は、丸太材に防腐処理がされ、立杭にも防腐処理された金属が使われている。年間雨量が3,000mmを超える富士山南麓では、気象条件に対して耐久性がある施工が必要だ。

 

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防腐処理された丸太階段、旧ゴルフ場脇

 

 

御釜塚北東の崩落が進む崖に設置された迂回路の丸太階段(2014年設置)では、立杭の増加、丸太材の腐食、丸太下の法面侵食が進み、来訪者は歩き辛い丸太階段を避けて階段脇を通り、歩道複線化が進んだ。

 

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立杭の増加、法面侵食、御釜塚東側崩壊崖迂回路

 

 

2018年に登山歩道保存会やボランティアによって、設置された大調整池下流の丸太階段や侵食止めは2020年には流出していたが、さらに侵食がすすんだ。「自然環境が厳しい富士山南麓側火山地帯では、歩道や周辺環境の保全管理は一筋縄ではいかない」ということを教えられる。

 

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大調整池直下。2018年。迂回路としてつくられた丸太階段

 

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同、侵食が進み丸太階段が流出した大調整池直下

 

 

御釜塚東側の崩壊谷

崩壊が進む崖直上の歩道は2012年にUTMFで使われ、2013年には通過が危険となり、急場のシカ道を使った迂回路を使われた。2014年に新たに丸太階段の迂回路がつくられた。この崩壊が進む谷は、御釜塚の北東を鋭く侵食している。

 

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崩壊が進む御釜塚北東の崖、対岸から

 

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崩落した旧登山道

 

 

ゴミ回収 56個 (ゴミ収集記録調査票に対応)

 

3.プラ 44 弁当 4 菓子容器 5 破片 35
4.発泡スチロール 2 破片 2
5.ビニール 6 衣類 1 5
6.鉄 4 飲料缶 2 その他 2

 

 

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