環境パトロール (2020-12) 自然休養林(8)
日時 | 2020年(令和2年)12月23日(水) 9:20 - 15:30 |
区域 | 富士山自然休養林D/E、Kコース |
天候 | 晴れ |
山頂 | (8時) 気温-18.8℃、湿度 27%、633.3hPa |
河口湖 | (8時)上空2km NW, 13m/s |
富士山自然休養林ハイキング・コースD(問合せ先:裾野市)、E(同、御殿場市)、K(同、裾野市)を水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目、浅黄塚、腰切塚、水ヶ塚公園で巡回する環境パトロールを行った。
Kコースは展望台改修工事中で、工事中は利用できない旨、自然休養林管理保護協議会のホームページで周知されている。歩道周辺の私的マーキングの設置状況や植生状況(ナラ枯れやスズタケなど)について確認するために巡回した。12月5日の環境パトロールで見た富士山の雪は、ほとんど消えていた。
ぐみさわから、南麓の宝永沢、獅子岩、成就沢の起伏が明瞭
水ヶ塚公園から、ほとんど雪が消えた
D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月の環境パトロールで報告した状態とほぼ同じだった。侵食段差などで歩きづらい本来の歩道を避け、国有林保護林内で目立つ多数の私的マーキングに誘導され、歩道外の林内植生を直線的に通過する踏み跡を来訪者が利用しているようだ。早期の対応をお願いしたい。
この区間の自然林入口付近、標高1,490m地点で、ナラ枯れのミズナラを確認した。この区間や旧作業道、旧歩道周辺は、スズタケの実生が一部は見られるものの、大半はスズタケが消失し、見通しが効く林内となっている。また、腰切塚西側では、枯れたスズタケの桿が多いが、場所によってはスズタケの実生が群生していた。ニホンジカは目撃せず、糞など新しい痕跡は少なかった。
浅黄塚の南東側で大きな侵食が目立った。
パトロール中、来訪者に出会わなかった。水ヶ塚公園駐車場の車は朝8時は2台、13時頃は約10台程度だった。
8時の水ヶ塚公園駐車場
13時の水ヶ塚公園駐車場
歩道
D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月に報告した状態とほぼ同じだった。来訪者は侵食段差などがある本来の歩道を避け、多数の目立つ私的マーキングに誘導され、保護林内の植生を直線的に通過している。このままでは、さらに多くの来訪者が国有林の富士山生物群集保護林内に踏み込み、樹木の根など植生を損傷するおそれがある。長く使われてきた須走口登山歩道の補修や私的マーキングの撤去など、歩道や周辺自然環境の保全管理を早期にお願いしたい。
左の登山歩道を外れ、植生内に新たな迂回の踏み跡
左の登山歩道を外れ、樹木の根を損傷する迂回の踏み跡
左の登山歩道を外れ植生内に新たな迂回の踏み跡
右の登山歩道を外れ、植生内に新たな迂回の踏み跡
浅黄塚東側の旧歩道周辺も、スズタケが消失し、踏み跡は、かすかで分かりづらい。赤い布の私的マーキングがあり、スカイライン方面へ誘導している。涸れ沢は侵食が激しい場所で約2mの段差がみられた。
2006年10月、背丈以上のスズタケに囲まれた旧歩道
今はスズタケが消失し、どこでも歩ける
旧歩道が涸れ沢となり、激しい侵食段差2m
涸れ沢の侵食部分、樹木の大きな根の下を穿つ
腰切塚南側のKコースの歩道は、展望台改修工事用に幅が約2mに拡大され簡易舗装されていた。
工事用に道幅を広げ簡易舗装
2019年7月、Kコース南側歩道
腰切塚東側のクロカン・コースでは、ウッドチップがコース外へ流出したままで、スズタケの実生部分に達していた。
クロカンコースのウッド・チップは流出したまま
須山口登山歩道1.5合目にある木製ベンチの老朽化が進んでいる。ここは、よく休憩に利用されており、Eコースの南山休憩所など他の施設とともに改修をお願いしたい。
須山口登山歩道1.5合目の木製ベンチ
標識
水ヶ塚公園から登る須山口登山歩道入り口にある協議会標準標識に、自然休養林内の立入り禁止コースの表示はなかった。同協議会のホームページには、立入禁止のA、B、J、Mコースの全面利用不可や一部利用不可、さらにKコースの工事中利用不可が明示されている。現場の案内図でも明示してほしい。同案内図近くに設置されていた協議会の「熊出没注意」の掲示板が破損して、注意情報が来訪者に伝わらない。
須山口登山歩道入口の自然休養林案内図
同地点付近の協議会の「熊出没注意」の掲示板が破損
私的マーキング
D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月の環境パトロールで報告した状態とほぼ同じだった。侵食段差などで歩きづらい本来の歩道を避け、国有林保護林内で多数の目立つ長いビニールテープの私的マーキングが林立している。これらのビニールテープは、通常の歩行では自然景観の中で煩わしく感じるほど、視認に必要以上の長さと頻度で設置されている。走行など一瞬で行き先を確認するために設置されたと思われる(この区間はネット上で多くのトレイルランナーが走行時間を競うタイムトライアル区間となっている)。歩道外の林内植生部分に付けられたこれらの私的マーキングに誘導され、林内の植生部分を損傷しながら直線的に通過し踏み固められている。このままでは、さらに多くの来訪者が私的マーキングに誘導され、踏み跡は国有林保護林内に踏み込み、植生損傷が激化し拡大するおそれがある。また、この踏み跡は直線的でミズ道化しやすく、あらたな侵食が広がりかねない。さらに、歩道の保全管理主体が曖昧となり、見通しが効く保護林内に新たな踏み跡を作りかねない。長く使われてきた須走口登山歩道の補修を進め、私的マーキングの撤去など、歩道や周辺自然環境の保全をすみやかに対応いただくようお願いしたい。
歩道外の林内植生部分に誘導する長いビニールテープ
必要以上に長いビニールテープの私的マーキング
ミズナラの「ナラ枯れ」
根元や幹にフラス(木屑)があり、縮れて枯れた葉が、落葉せず枝についていた。ミズナラの「ナラ枯れ」が新たに標高1,490m付近で見られた。
自然林入口付近の根元にフラスがみられるミズナラ
同ミズナラは落葉せずに縮れた枯れ葉が枝についたまま
スズタケの成長
旧東臼塚遊歩道の標高1,440m付近でスズタケの実生が群生していた(下図の黄緑の丸)。また、須山口登山歩道西側や旧東臼塚遊歩道、Kコース南側で、まばらなスズタケの実生が随所にみられた(下図の緑色の丸)。浅黄塚東南側、旧東臼塚遊歩道、Kコース南側ではスズタケの枯れた桿(かん)が残っている(下図の茶色のヒートマップ)。須山口登山歩道から旧作業道周辺では、スズタケは消失し、枯れた桿もほとんどみあたらず、見通しが効く林内となっている(下図の青色のヒートマップ)。
野生動物
今回の環境パトロール中に、ニホンジカを目撃したり、鳴き声を聞いたりすることはなかった。ニホンジカの新たな痕跡も少なく、浅黄塚北の旧作業道周辺の二箇所で比較的新しいニホンジカの糞をみた程度だ。
須山口登山歩道1.5合目付近では、10月中旬から12月までの期間、ニホンジカ、ニホンイノシシ、ニホンアナグマ、ホンドタヌキなどが記録されていた。同一箇所で行った、2007年から2013年までの記録と比較してみると、記録日数あたりの野生動物撮影回数にあたる撮影頻度がニホンジカで減少していた。
ニホンジカ♀3頭
4尖角のニホンジカ♂
1尖角のニホンジカ♂
ニホンイノシシ
ニホンアナグマ
ホンドタヌキ
ゴミ回収 32個 ゴミ収集記録(調査票に対応)
1.紙 | 1 | 紙片 | 1 | ||||
2.布 | 1 | 衣類 | 1 | ||||
3.プラ | 25 | ペットボトル | 1 | 破片 | 22 | その他 | 1 |
5.ビニール | 2 | 紐 | 2 | ||||
6.鉄 | 2 | 飲料缶 | 2 | ||||
7.ガラス | 1 | 破片 | 1 |
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