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2020年12月28日 (月)

環境パトロール (2020-12) 自然休養林(8)

日時 2020年(令和2年)12月23日(水) 9:20 - 15:30
区域 富士山自然休養林D/E、Kコース
天候 晴れ
山頂 (8時) 気温-18.8℃、湿度 27%、633.3hPa
河口湖 (8時)上空2km NW, 13m/s

 

 

 

富士山自然休養林ハイキング・コースD(問合せ先:裾野市)、E(同、御殿場市)、K(同、裾野市)を水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目、浅黄塚、腰切塚、水ヶ塚公園で巡回する環境パトロールを行った。

Kコースは展望台改修工事中で、工事中は利用できない旨、自然休養林管理保護協議会のホームページで周知されている。歩道周辺の私的マーキングの設置状況や植生状況(ナラ枯れやスズタケなど)について確認するために巡回した。12月5日の環境パトロールで見た富士山の雪は、ほとんど消えていた。

 

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ぐみさわから、南麓の宝永沢、獅子岩、成就沢の起伏が明瞭

 

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水ヶ塚公園から、ほとんど雪が消えた

 

 

D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月の環境パトロールで報告した状態とほぼ同じだった。侵食段差などで歩きづらい本来の歩道を避け、国有林保護林内で目立つ多数の私的マーキングに誘導され、歩道外の林内植生を直線的に通過する踏み跡を来訪者が利用しているようだ。早期の対応をお願いしたい。

この区間の自然林入口付近、標高1,490m地点で、ナラ枯れのミズナラを確認した。この区間や旧作業道、旧歩道周辺は、スズタケの実生が一部は見られるものの、大半はスズタケが消失し、見通しが効く林内となっている。また、腰切塚西側では、枯れたスズタケの桿が多いが、場所によってはスズタケの実生が群生していた。ニホンジカは目撃せず、糞など新しい痕跡は少なかった。

浅黄塚の南東側で大きな侵食が目立った。

パトロール中、来訪者に出会わなかった。水ヶ塚公園駐車場の車は朝8時は2台、13時頃は約10台程度だった。

 

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8時の水ヶ塚公園駐車場

 

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13時の水ヶ塚公園駐車場

 

 

歩道

D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月に報告した状態とほぼ同じだった。来訪者は侵食段差などがある本来の歩道を避け、多数の目立つ私的マーキングに誘導され、保護林内の植生を直線的に通過している。このままでは、さらに多くの来訪者が国有林の富士山生物群集保護林内に踏み込み、樹木の根など植生を損傷するおそれがある。長く使われてきた須走口登山歩道の補修や私的マーキングの撤去など、歩道や周辺自然環境の保全管理を早期にお願いしたい。

 

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左の登山歩道を外れ、植生内に新たな迂回の踏み跡

 

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左の登山歩道を外れ、樹木の根を損傷する迂回の踏み跡

 

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左の登山歩道を外れ植生内に新たな迂回の踏み跡

 

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右の登山歩道を外れ、植生内に新たな迂回の踏み跡

 

 

浅黄塚東側の旧歩道周辺も、スズタケが消失し、踏み跡は、かすかで分かりづらい。赤い布の私的マーキングがあり、スカイライン方面へ誘導している。涸れ沢は侵食が激しい場所で約2mの段差がみられた。

 

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2006年10月、背丈以上のスズタケに囲まれた旧歩道

 

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今はスズタケが消失し、どこでも歩ける

 

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旧歩道が涸れ沢となり、激しい侵食段差2m

 

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涸れ沢の侵食部分、樹木の大きな根の下を穿つ

 

 

腰切塚南側のKコースの歩道は、展望台改修工事用に幅が約2mに拡大され簡易舗装されていた。

 

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工事用に道幅を広げ簡易舗装

 

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2019年7月、Kコース南側歩道

 

 

腰切塚東側のクロカン・コースでは、ウッドチップがコース外へ流出したままで、スズタケの実生部分に達していた。

 

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クロカンコースのウッド・チップは流出したまま

 

 

須山口登山歩道1.5合目にある木製ベンチの老朽化が進んでいる。ここは、よく休憩に利用されており、Eコースの南山休憩所など他の施設とともに改修をお願いしたい。

 

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須山口登山歩道1.5合目の木製ベンチ

 

 

標識

水ヶ塚公園から登る須山口登山歩道入り口にある協議会標準標識に、自然休養林内の立入り禁止コースの表示はなかった。同協議会のホームページには、立入禁止のA、B、J、Mコースの全面利用不可や一部利用不可、さらにKコースの工事中利用不可が明示されている。現場の案内図でも明示してほしい。同案内図近くに設置されていた協議会の「熊出没注意」の掲示板が破損して、注意情報が来訪者に伝わらない。

 

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須山口登山歩道入口の自然休養林案内図

 

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同地点付近の協議会の「熊出没注意」の掲示板が破損

 

 

私的マーキング

D/Eコースの水ヶ塚公園、須山口登山歩道1.5合目区間では、11月の環境パトロールで報告した状態とほぼ同じだった。侵食段差などで歩きづらい本来の歩道を避け、国有林保護林内で多数の目立つ長いビニールテープの私的マーキングが林立している。これらのビニールテープは、通常の歩行では自然景観の中で煩わしく感じるほど、視認に必要以上の長さと頻度で設置されている。走行など一瞬で行き先を確認するために設置されたと思われる(この区間はネット上で多くのトレイルランナーが走行時間を競うタイムトライアル区間となっている)。歩道外の林内植生部分に付けられたこれらの私的マーキングに誘導され、林内の植生部分を損傷しながら直線的に通過し踏み固められている。このままでは、さらに多くの来訪者が私的マーキングに誘導され、踏み跡は国有林保護林内に踏み込み、植生損傷が激化し拡大するおそれがある。また、この踏み跡は直線的でミズ道化しやすく、あらたな侵食が広がりかねない。さらに、歩道の保全管理主体が曖昧となり、見通しが効く保護林内に新たな踏み跡を作りかねない。長く使われてきた須走口登山歩道の補修を進め、私的マーキングの撤去など、歩道や周辺自然環境の保全をすみやかに対応いただくようお願いしたい。

 

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歩道外の林内植生部分に誘導する長いビニールテープ

 

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必要以上に長いビニールテープの私的マーキング

 

 

ミズナラの「ナラ枯れ」

根元や幹にフラス(木屑)があり、縮れて枯れた葉が、落葉せず枝についていた。ミズナラの「ナラ枯れ」が新たに標高1,490m付近で見られた。

 

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自然林入口付近の根元にフラスがみられるミズナラ

 

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同ミズナラは落葉せずに縮れた枯れ葉が枝についたまま

 

 

スズタケの成長

旧東臼塚遊歩道の標高1,440m付近でスズタケの実生が群生していた(下図の黄緑の丸)。また、須山口登山歩道西側や旧東臼塚遊歩道、Kコース南側で、まばらなスズタケの実生が随所にみられた(下図の緑色の丸)。浅黄塚東南側、旧東臼塚遊歩道、Kコース南側ではスズタケの枯れた桿(かん)が残っている(下図の茶色のヒートマップ)。須山口登山歩道から旧作業道周辺では、スズタケは消失し、枯れた桿もほとんどみあたらず、見通しが効く林内となっている(下図の青色のヒートマップ)。

 

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野生動物

今回の環境パトロール中に、ニホンジカを目撃したり、鳴き声を聞いたりすることはなかった。ニホンジカの新たな痕跡も少なく、浅黄塚北の旧作業道周辺の二箇所で比較的新しいニホンジカの糞をみた程度だ。

須山口登山歩道1.5合目付近では、10月中旬から12月までの期間、ニホンジカ、ニホンイノシシ、ニホンアナグマ、ホンドタヌキなどが記録されていた。同一箇所で行った、2007年から2013年までの記録と比較してみると、記録日数あたりの野生動物撮影回数にあたる撮影頻度がニホンジカで減少していた。

 

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ニホンジカ♀3頭

 

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4尖角のニホンジカ♂

 

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1尖角のニホンジカ♂

 

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ニホンイノシシ

 

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ニホンアナグマ

 

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ホンドタヌキ

 

 

ゴミ回収 32 ゴミ収集記録(調査票に対応)

 

1.紙 1 紙片 1
2.布 1 衣類 1
3.プラ 25 ペットボトル 1 破片 22 その他 1
5.ビニール 2 紐    2
6.鉄 2 飲料缶 2
7.ガラス 1 破片 1

 

 

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2020年12月 7日 (月)

合同環境パトロール (2020-11) 自然休養林(7)

日時 2020年(令和2年)12月5日(土) 9:20 - 15:30
区域 作業道、富士山自然休養林B、A、Lコース
天候 雨、曇、晴れ
山頂 (8時) 気温-10.2℃、湿度 91%、637.8hPa
河口湖 (8時)上空3km SW, 21m/s

 

 

林道、作業道、富士山自然休養林ハイキングコースB(問合せ先:富士市)、A(同、富士宮市)、L(同、富士宮市)を大渕林道、八幡堂、高鉢駐車場、二合目林道経由で巡回する合同環境パトロールに参加した。

 

B、Aコースは、ともに立ち入り禁止が継続されている。歩道周辺の植生状況(ナラ枯れやスズタケなど)について確認するために巡回した。銃によるニホンジカ捕獲のため富士山国有林への入林禁止が年度末まで延長され、また、親子熊の出没が確認されているので、十分に注意し巡回した。

 

大渕林道から八幡堂までの歩道が侵食により、場所によっては通過困難になっていた。この区間は来訪者があるためか、踏み跡は比較的明瞭だった。設置者不明の標識や表示、ビニールテープの私的マーキングが多数見られた。登山道周辺では、ナラ枯れのミズナラが標高1,475m付近まで見られた。標高1,530mから1,650mにかけてスズタケの実生が群生していた。自然休養林Bコースでは、日沢の渡渉迂回路を分かりにくくしていた倒木の枝が払われ、迂回路が分かりやすくなっていた。西臼塚のLコースで、歩道を塞いでいた丸太が歩道外に移され、歩道が乾燥していたこともあり、複線化した迂回路を使用せずに通過できた。

 

パトロール中に来訪者に出会わなかった。水ヶ塚公園駐車場の車は朝8時は約20台、16時頃は約25台程度だった。

 

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16時の水ヶ塚公園駐車場

 

 

歩道

大渕林道から八幡堂へ至る歩道に侵食による荒廃がみられた。10年前にはこうした侵食荒廃は見られなかった。現在、土のうで作られた水止めや水切りがあるが、侵食は進んでいる。八幡堂より上部では、かつて歩道を塞いでいた倒木はすべて処理され、補修関連の人手が入っているようだ。

 

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ミズ道となり侵食がすすむ歩道

 

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荒廃し迂回複線化、奥は水止め

 

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通行困難な約1.2mの侵食段差

 

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歩道を塞いでいた倒木はすべて処理されている

 

 

Bコースの日沢渡渉箇所は通行困難だが、9月には倒木で分かりにくかった迂回路で、倒木の枝が払われ迂回路が明瞭になっていた。

 

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日沢の大規模な侵食により通行困難になった渡渉箇所

 

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同地点、2007年5月、現状より沢幅が狭く浅い

 

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日沢渡渉箇所の迂回路。倒木の枝が払われた

 

 

Aコースでは、高鉢東側の標高1,600m付近の歩道がミズ道となり侵食が激しい。また、二合目林道から西臼塚ナラ広場への斜面では、侵食と通行により樹木根が露出し損傷している。

 

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高鉢東側の歩道侵食段差0.6m

 

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二合目林道~西臼塚ナラ広場、樹木根の露出・損傷

 

 

西臼塚のLコースでは歩道を塞いでいた丸太が歩道外に移され、歩道が乾燥していたこともあり、複線化した迂回路を使用せずに通過できた。いずれの箇所も、本格的な補修作業が必要と思われる。

 

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流出丸太が移動され乾燥した本来の歩道を通行

 

 

施設・設備

西臼塚の公衆トイレは凍結防止のためと書かれて閉鎖されていた。来訪者のため、可能な限り開放してほしい。開放できない場合は、そのむね、協議会のホームページで案内してほしい。高鉢駐車場の公衆トイレは施錠されていた。

 

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凍結防止のため閉鎖された西臼塚の公衆トイレ

 

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施錠された高鉢駐車場の公衆トイレ

 

 

標識

巡回した作業道に幾種類もの私的マーキングのビニールテープが見られた。スカイライン登山区間との交差箇所では、同じ場所に、多数の標識や私的マーキングが見られた。これらの標識類にはすべて標識設置者の表示はなかった。

 

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八幡堂~スカイライン周遊区間、解れたビニールテープ

 

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スカイライン登山区間交差、各種私的マーキングのビニールテープ

 

 

Aコースの二合目林道周辺~ナラ広場への歩道は、人工林内の侵食や樹木根の露出・損傷が進み複線化し踏み跡が分かりづらく、私的マーキングが多数設置されている。解れやすいビニールテープをガイドロープとして使ったり、枯れ木を直接赤くペイントしている。林業関係と思われる、生木の樹皮を削り白くペイントしたものも多く見られた。

 

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二合目林道~ナラ広場、解れたビニールテープ

 

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同、私的マーキング、倒木に直接ペイント

 

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同、私的マーキング、2種類のビニールテープ

 

 

大渕林道のゲートやスカイライン周遊区間交差地点に、「“熊”出没中に付き危険。周辺にて目撃情報多し」表示があり、2020年8月30日撮影の子連れの母グマの写真と説明が載せてあった。森林管理署さんから連絡があった「二合目林道や六番林道でツキノワグマ出没」の件だ。高鉢駐車場のAコース入口には、「“熊”出没中、危険につき立ち入り禁止」の表示があリ、2020年5月29日撮影のツキノワグマの写真が載せてあった。

 

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西臼塚大渕林道入口ゲートの"熊出没注意"

 

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高鉢駐車場のAコース入口の「立入禁止」案内

 

 

 

ミズナラの「ナラ枯れ」

根元や幹にフラス(木屑)があり、木によっては、縮れて枯れた葉が、落葉せず枝についていた。ミズナラの「ナラ枯れ」が標高1,475m付近まで見られた。

 

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スズタケの成長

Bコース周辺では、ほとんどスズタケが枯れ林内の見通しが効く。自然休養林の多くの場所で、こうしたスズタケが枯れが見られる。2005年当時は、スズタケが生い茂っていた。

 

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スズタケが枯れ見通しが効く林内

 

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同、2005年。背丈を越えるスズタケで見通しはない

 

 

標高1,530mから1,650mにかけてスズタケの実生が群生していた(下図の番号がついた緑丸)。また、作業道周辺では、まばらなスズタケの実生が随所にみられた(下図の緑色のヒートマップ)。作業道のスカイライン登山区間交差からBコース高鉢駐車場にかけては、スズタケの枯れた桿(かん)が残っている(下図の茶色のヒートマップ)。二合目林道から西臼塚にかけては、スズタケは枯れも含めてみあたらない(下図の青色のヒートマップ)。

ササ類(スズタケ)は数十年をかけて回復すると言われている。十数年後、歩道周辺の景観は、見通しの効く林内から、15年前のように、背丈を超えるスズタケが繁る林内へと大きく変化する可能性がある。

 

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スズタケの成長。緑丸はスズタケ実生の群生。数字は写真の番号

 

 

ゴミ回収 12個 ゴミ収集記録(調査票に対応)

2.布 1 切れ端 1
3.プラ 4 菓子容器 3 その他 1
5.ビニール 5 2 紐    3
6.鉄 1 飲料缶 1
8.ゴム 1 その他 1

 

 

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合同環境パトロール終了後、雨も上がり、雪をまとった富士山の景観にみとれた。

 

 

 

 

 

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