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2019年9月15日 (日)

活動報告 2019-15 頂上環境パトロール (2)

頂上のコケ類

富士山頂のコケは、増沢先生によって「永久凍土が育てる小さな『森』」(富士山2005、山と渓谷)として美しい写真とともに紹介され、山頂にも緑豊かな「森」があることが知られるようになった。冬の低温、強風、乾燥した極限の世界でも生息するその強靭な生命力に感動する。永久凍土が育てるコケの群落は、長い時間をかけて頂上にたどり着いた来訪者へ最高の恵だ。また、剣ヶ峰周辺では、南極でよく見られるコケとラン藻の共生など観察され、富士山頂は南極と同じような環境が存在する特別な場所だと思う。富士山の概ね標高2,500m以上は、国立公園内でも厳正な保護を図るエリアである特別保護地区に指定されている。

 それほど保護に特別な注意が払われている極限環境に生育するコケ類に2010年以降変化が見られるようになった。とりわけ、剣ヶ峰周辺、なかでも、旧測候所周辺のコケ群落が枯れている。旧測候所の北東側では、2005年以降、特に、2010年ごろから、岩の下部を中心にコケ類が枯れ、被植が減ってきたようだ。

Moss20052014

2005年~2014年

 

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2017年9月26日

 

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2019年9月10日

 

コケ類がなくなった場所をよく見ると、細い糸状の繊維らしきものが沢山付着している。右上の麻ひものようなものが解けたのだろうか。ゴミの通り道になっているのだろうか?

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2019年9月10日

 

 

剣ヶ峰旧測候所入口の階段脇もコケ類の衰退が目立つようになった。

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2012年8月22日

 

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2017年9月26日

 

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2019年9月10日

 

増沢先生の報告でも、「研究開始時には剣ヶ峰西側には黒色のコケが面積にして約1m2ぐらい分布していた。しかし、最終年度の平成22年度秋季にはラン藻の量が減少し、面積にして300cm2ほどであった」と指摘されている。つまり、剣ヶ峰西側では2007年から2010年までに黒色のコケの面積が100分の3に減少している。

「原因として、地球温暖化の影響が大きい」と指摘されている。

一方、私達が定点観察している他の地点(来訪者の多い御殿場口頂上・富士宮頂上間)のコケ類の多くは、剣ヶ峰周辺のコケ類に比べ、それほどの衰退は感じられない。

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銀名水西側、お鉢めぐり道沿いのコケ類

 

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今後も、環境パトロールの度に山頂の「永久凍土が育てる小さな『森』」の変化を記録していきたい。

 

頂上の維管束植物

維管束植物とは、菌類、藻類、コケ類などとは異なり、維管束と呼ばれる通道組織を有する植物の総称。具体的には、シダ植物および種子植物(裸子植物、被子植物)をいう。過去には、富士山頂のような上部高山帯には生息しないとされてきたが、山頂での維管束植物は、コタヌキラン、イワツメクサなどが確認されている(増沢武弘「富士山頂の自然」静岡県、2002年)。

今回の環境パトロールでは、頂上西側の多くの場所でコタヌキラン、イワノガリヤスなどの維管束植物を度々見かけた。

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コタヌキラン

 

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イワノガリヤス

 

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イワスゲか?

 

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いくつもの維管束植物が見える

 

富士山頂でも維管束植物が生息できる環境が整ってきたということは確かだと思う。では、どんな形で、これらの維管束植物が侵入してきたのだろう。よく分からない事が多い。今後も見守っていきたい。

 

               続く

 

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