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2014年3月21日 (金)

富士山勉強会

3月16日(日)、富士市ふじさんめっせで開催された、ふじさんネットワーク主催の富士山勉強会に参加した。富士山自然環境の保全関連の勉強会だったので、会議室がほとんど埋まるくらい、大勢の方が参加した。東京から出席されたトレイルラン関係者の方もいて、活発な質疑応答があった。


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土隆一ふじさんネットワーク会長(静岡大学名誉教授)の挨拶。富士山エコレンジャー講習会で何回も富士山の成り立ち(地形・地質と火山活動の特徴、地下水と湧水の特徴)を教えていただき、私達の活動をご支援くださっている。
 
 

講演Ⅰは「富士山麓植生保全パトロールの結果報告」。富士山自然休養林を中心とした植生保全パトロールの調査結果が報告された。世界文化遺産登録により、多くの来訪者が予想され、踏圧等から起こる自然植生への影響が懸念されるため、自然植生の現況を把握するとともに、パトロール監視を実施し、富士山の自然環境の保全対策を推進することを目的にしている。植物調査結果とともに、登山道荒廃状況も報告された。
 
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静岡県自然保護課の大川慎一さん。今回の調査で貴重な植物(絶滅危惧種など)が107地点で1133個体確認された。また、国立公園指定種が81種691地点で確認されたそうだ。結構な数が確認されたと思ったが、歩道および歩道の両側3mを32km踏査したのだから、片側を見ながらだと、100m往復して5.7個。つまり35m歩いて1個。寂しい気がする。
 
 
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株式会社環境アセスメントセンターの品川修二さん。確認した希少植物の特徴を個別に説明いただく。ただし、科名で紹介され、種名は教えてくれない。盗掘対応の配慮だ。スライドを見ながら、頭のなかで種名クイズの回答。
 
 

講演Ⅱは、富士山エコレンジャー連絡会が「富士山南麓の森とトレイルラン大会」と題して報告する機会をいただいた。時間が限られていたので舌足らずの説明だったかもしれない。説明の中のスライドを数ページご紹介する。
 
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崩れやすい南麓の森での経験と継続的な利用のため行政や民間が協働し、平成19年「自然観察会等のポイント、ガイド・ライン」が作られた。環境への負荷軽減やガイドの掌握力を考え、一団体あたり20人の利用を目安とするようガイドされている。2000人を超えるイベント利用は想定されておらず、あらたなガイドラインが要請される。
 

2000
あらためて主催者のコース・マップを見た。富士山火口を中心にして、北麓のコースで最短距離を半径にし、円を描く。北麓に比較すると、南麓の富士山本体への入り込みが尋常ではない。北麓にも、大室山、長尾山などの側火山があるが、そうした地形・地質上崩れやすいところはコースに選定されていない。侵食をすすめる年間降水量をみても、北麓は南麓に比べてはるかにすくない。

 
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2年間の調査を通して学んだことのひとつに、「後追いの調査では、インパクトが残るだけ」ということがある。事前に、自然環境保全を担保することが重要だ。専門家が富士山で連続踏圧のインパクトを実験・調査した知見がある。こうした知見を活用し、、事前に自然環境への負荷を見積もり、コースや参加人数を検討するようお願いしたい。
 
専門家による連続踏圧のインパクトを実験・調査した知見の例 
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富士山大沢川で行われた土壌の踏圧実験調査
「踏みつけはここまで!-踏圧の蓄積と土壌の悪化-」 関元聡、1998, プレック研究所
 


こうした調査内容に関心をお持ちの方は、全スライドがあります。お読みいただければ幸いです。

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(全説明資料のPDFファイルはここをクリックしダウンロードできます)

 
また、説明で使用した映像は以下のURL(YouTube)でご覧ください。

スライド38ページ 連続踏圧と降雨による土壌侵食
 
スライド53ページ 繰り返されるインパクトと土壌侵食
 
スライド56ページ 不可逆的変化

スライド60ページ 求められる安全、災害管理

スライド63ページ ランナー通過に一昼夜26時間以上

スライド88ページ コース選定、運営管理、調査の例


説明時に配布した富士山エコレンジャー連絡会の調査報告書
「平成25年度 トレイルラン植生保全環境調査・中間報告」


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コメント

おつかれさまでした

投稿: もも | 2014年3月21日 (金) 19時51分

偏った勉強会でしたね。

投稿: inaba | 2014年5月 1日 (木) 02時33分

inabaさま
コメントありがとうございます。少しでも富士山の自然環境への負荷が減り、次の世代の方々へ美しい富士山が継承できるよう願っています。
富士山勉強会は、岩佐さまにも感想をいただきました。

http://dogsorcaravan.com/2014/03/18/presentation-on-forest-on-southern-mt-fuji-and-utmf-and-our-impression/?fb_action_ids=367038806767928&fb_action_types=og.comments&fb_source=aggregation&fb_aggregation_id=288381481237582

投稿: 富士山エコレンジャー | 2014年5月 1日 (木) 18時09分

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